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【コラム】海外通信員

もうすぐブラジル全土のお祭り=W杯が始まる 6度目の王者へ

[ 2022年10月31日 20:00 ]

ブラジル代表FWネイマール(パリSG)
Photo By AP

 もうすぐ4年に一度のブラジル全土のお祭りが始まる。国中が一つの、それも楽しいことに夢中になる魔法の時間が。

 W杯だ。

 1930年の第1回W杯ウルグアイ大会に出場してから、ブラジルは今回のカタール大会まで世界唯一全ての大会に出場している国だ。ほとんどのブラジルが生まれてから4年に一度、このお祭りの渦に巻き込まれるのだ。

 私も1992年にブラジルに渡ってから、4年に一度の思い出を重ねてきた。それもラッキーなことに、ブラジルに行って2年後に94年アメリカ大会があった。初めてブラジルで見るW杯。初めてブラジルで体験するW杯。

 W杯予選の白熱も味わった。初めてブラジル代表の試合をミネイロンスタジアムの7万人の大観衆の中、興奮しながら見た

 そして、W杯本戦のブラジルの試合の時間は学校も会社も、お役所も銀行も全てが休みになることを知った。セレソンは国民の憧れであり、スターであり、誇りだった。カナリア色のユニフォームは人々の希望だった。

 そして、24年ぶりに優勝した時の歓喜。そんなものを知ってしまった。たまたまリオに行くことがあり、アメリカから優勝トロフィーをブラジル持ち帰ったチームのパレードがあり、夜遅くに見に行った。無邪気な子供のように心から純粋にブラジルの優勝が嬉しくて、楽しくてたまらなかった。

 98年のフランスW杯も忘れられない。ロマーリオが呼ばれず、ロナウドが決勝の数時間前に発作で倒れて、決勝戦ではチームメイトが心ここに在らずで、ぼろ負けした。あんなセンセーショナルでエモーショナルな結末を誰が予測できただろう?

 2002年は再び、優勝の大感激を味わった。どの試合も、自分は日本人なのに、ブラジルの試合でブラジルの国歌を聞くたびに涙が出た。心が揺さぶられた。ブラジル人は4年に一回このような体の細胞がひりつくような経験を積み重ねる。

 それがW杯なのだ。

 それは喜びであり、悲しみであり、怒りであり、苦しみであり、誇りであり、感情の爆発なのだ。と同時に、試合に勝てば勝つほど休みが増えるというお祭り状態。

 それがうまくいけばひと月続く。今日はあの試合、この試合、そして、ブラジルの試合がある時間はお休みと盆と正月がW杯の間は一緒に来たような高揚感を味わう。

 今年は、大統領選とW杯の順序が逆になるが(カタールの冬に行われるため)、W杯イヤーと大統領選は同じ年なのだ。ブラジルは投票が義務制なので、投票をしなければならない。

 行きたい人だけが行く選挙ではないので、誰もが選挙の話で持ちきりになる。確かに国を2分するが、選挙という同じテーマで国が動く。そして、W杯というテーマで国が動く。それがブラジルという国なのだ。バラバラだけど、同じ方向を見る時が定期的にある。

 ああ、賑わしい賑わしい・・・。ああ、もうすぐW杯が始まる・・・・。

 ひと月お祭りが続くことを誰もが祈っている。すなわち、優勝だ。6回目の。(大野美夏=サンパウロ通信員)

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