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【コラム】海外通信員

吉田麻也、加入のサンプドリア チームの現状は!?

[ 2020年2月14日 17:00 ]

 吉田麻也が移籍したサンプドリア。8日のトリノ戦ではベンチスタートとなったものの、3ー1で勝利した展開では出場機会がなかった。「まあ理解はできますけど。まあここにプレーしにきたんでね、1試合でも早く、1分1秒でも早くピッチに立てるように、いい準備をします」。試合後に話をきくと、合流後すぐではあったが出場したかったという思いが溢れ出てきた。7年半の間自身も愛着もわき、またクラブやサポーターからも愛してもらえたサウサンプトンを「ぬるま湯につかりすぎた」とまで言って離れてきたのは、プレーをするためだ。新たな戦いの場となるサンプドリアとは今、どういうクラブになっているのか。

 ジェノアとともに港町ジェノバをホームタウンとする、セリエA常連のクラブ。ロベルト・マンチーニやジャンルカ・ビアリらを擁し、1990-91シーズンはスクデットを獲得したこともある。2003-04シーズンには柳沢敦も所属していた。近年は優勝争いまでは加われないものの、順位表の左半分を常にキープする中堅クラブとして立場を確立していた。前線では35歳のベテランFWファビオ・クアリアレッラを主軸に据えるが、基本的には若手中心の戦力を揃え、優秀な監督に指揮を取らせるという方針で戦ってきていた。

 ところが今シーズンは、序盤からつまずいた。夏にはクラブに買収の話が持ち上がったものの立ち消えとなり、経営方針が定まらないムードは現場にも波及してしまう。その結果開幕7節では1勝6敗と散々な目にあい、まさかの最下位に低迷。10月のうちにエウセビオ・ディ・フランチェスコ監督を解任し、レスターを率いてプレミアリーグを優勝させたあのクラウディオ・ラニエリ監督に再建を委ねた。そこからクラブはなんとか巻き返しを図り、今に至るという状況である。最下位はなんとか脱し、降格権となる18位からもなんとか脱出することができたものの、まだまだ予断を許さない。

 さてその中で吉田が入ることになる守備陣だが、これがまたやや不安定な陣容になっている。サイドバックは、ポーランド代表のバルトシュ・ベレシンスキとイタリアの年代別代表に招集経験のあるニコラ・ムッルで安定している。しかし課題はセンターバックだ。主軸を務めていたアレックス・フェラーリが、靭帯損傷の大ケガにより今季絶望となった。その代役として冬の移籍市場で呼ばれたのが吉田と、ナポリからレンタルで移籍した元イタリア代表のロレンツォ・トネッリだ。ところがサウサンプトンでベンチ生活を送っていた吉田同様、トネッリもまた古巣のナポリでほとんど試合に出ておらず、実戦感覚が強く不安視される状態だったのである。さらには、主軸の一人であるガンビア代表のオマール・コリーがまた不安定。2年目の今シーズンはミスが多く、トリノ戦でも失点に絡む決定的なミスを1つ犯していた。

 こういう状況の中で吉田は、ポジション奪取に挑むというわけだ。ただここでネックとなるのは、吉田が右利きのセンターバックとして呼ばれたということ。後方からの組み立てを重視するチームにあって、2枚のセンターバックの右から組み立てに手を貸すという役割が期待されている。ただ、この位置では先に移籍してきたトネッリがそこそこ安定してプレーできているのだ。狙うはコリーからのポジション奪取だが、果たして左CBとしてもフィットできるかどうか。

 そのために鍵となるのは、チームに早く慣れること。さいわいサンプドリアには、マノロ・ガッビアディーニとガストン・ラミレスというサウサンプトン時代の元同僚が2人いる。移籍話が持ち上がった際、吉田は彼らに連絡を取ったのだという。移籍の決まった直後、3日のナポリ戦に話を聞くとガッビアディーニは「(セリエAへの順応は)大丈夫だと思う。彼はサッカー選手としてもとてもインテリジェンスのある選手だから、早く適応できると思っている」と話していた。

 サッカーのテンポはプレミアリーグほどに早くはない分、「前に繋ぐよりもまずボールをポゼッションすることが結構多い」とは吉田の弁。ディフェンダーを背にしてボールをキープし、ゴール前の密集の中で巧みな駆け引きを挑んでくる相手FW陣にどう対処するのか。プレミアで確かな実績を積んだ日本代表主将の対応力に期待が寄せられている。(神尾光臣=イタリア通信員)

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