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【コラム】海外通信員

ウルグアイ代表次期監督は? 4大会連続W杯予選突破へ正念場

[ 2021年12月10日 16:15 ]

11月19日ウルグアイ代表監督を解任されたオスカル・タバレス氏
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 この原稿を書いている12月10日現在で、ウルグアイサッカー連盟(AUF)がウルグアイ代表の「マエストロ」ことオスカル・タバレス監督(74歳)を解任してから3週間が経過した。ウルグアイのメディアによると、遅くとも14日には後任が決まるらしい。

 これまで15年間も代表チームを指揮してきた監督をW杯南米予選残り4節という時点で辞めさせたことは、AUFにとって大きな賭けである。ウルグアイは現在10ヵ国中7位にあり、予選通過の可能性は十分残されているものの、4位以下5チームが勝点2点差でひしめき合う展開となっており、タバレス監督のままでは熾烈な争いを勝ち抜けることができないと判断したのだ。

 今のところ、後任候補に挙げられているのは3人。ブラジルのインテルナシオナルを率いるディエゴ・アギーレ(56歳)、今年1月まで約1年間MLSのインテル・マイアミの監督を務めていたディエゴ・アロンソ(46歳)、アルゼンチンのCAタジェレスの監督を務めるアレクサンデル・メディーナ(43歳)で、いずれもウルグアイ人だ。

 当初、AUFが後任に熱望したのはアルゼンチンのリーベルプレートで活躍中のマルセロ・ガジャルド監督だった。ガジャルドは先のアルゼンチン1部リーグ制覇をもって、2014年6月から指揮をとり始めたリーベルにおいてタイトル獲得数を13に伸ばしたばかりで、サポーターから絶大な支持を得ているのはもちろん、国内外から指導者として高い評価を得ている。AUFのイグナシオ・アロンソ会長はガジャルドの代理人フアン・べロスを通して5年契約のオファーを提示し、返答を待っていたが、去る8日、ガジャルドが突然開いた記者会見で「もう1年リーベルに残ることを選んだ」と発表。これをもってウルグアイ代表監督は前述の3人の中から選考されることとなった。

 同国の有力紙エル・パイスによると、アロンソ会長以下、AUF理事会メンバーの大半が推す第一候補はアギーレだそうだ。アギーレは現役時代、タバレス監督率いるペニャロールの中心選手として1987年コパ・リベルタドーレスで優勝し、その後日本で開催されたトヨタカップ(雪の中で行われた異例のゲーム)にも出場していることから、日本でも覚えている人がいるかもしれない。勤勉で真面目な性格の持ち主で、トヨタカップで来日した際も、ギリシャのオリンピアコス移籍を目前に控えていたアギーレが滞在中に一生懸命ギリシャ語を勉強していたという話は有名だ。

 アギーレが第一候補に挙げられている理由としては(1)ビッグクラブでの指導歴、(2)チームマネジメント能力、(3)U20ウルグアイ代表指導歴などがある他、代表OBでリーダー格のディエゴ・ルガーノが絶賛していることからわかるとおり、選手たちから敬愛される存在であることも大きく影響している。

 だが、AUFを迷わせる要因もある。アギーレが監督を務めるインテルナシオナルが、現在開催中のブラジル全国選手権で不振が続き、直近の5試合で1分4敗、順位は20チーム中12位と低迷していることだ。また、W杯予選の終盤という大一番での監督交代となるため、「今の代表選手たちを熟知している人物の方が良い」との考え方もあり、2018年まで約11年間ウルグアイユース代表の監督だったファビアン・コイトに任せるのが無難だろうという意見もある。

 さて、ここまで解任発表から現在までの状況を説明したが、少し個人的な意見を言わせてもらうと、誰が後任になっても、予選を通過してもしなくても、タバレス監督がここで解雇されたのは残念で仕方がない。結果よりもプロセスを重視し、15年もの間南米の模範となってきた国が、結局「戦績不振」を理由に監督を辞めさせてしまうとはどうも腑に落ちない。ウルグアイ国内では「解任は成績ではなく政治的圧力がかかったため」との見方もあるが、そんな声にも信憑性を感じてしまうほど納得がいかない。

 そして、プロセスを大切にしていながら、タバレス監督のもとで若手の指導者たちが育っていなかったことも悔やまれる。かのホセ・ペケルマンは自分の教え子である元代表選手を常に指導スタッフに加え、代表におけるスカウティングと指導のノウハウを現場で学ばせることで知られるが、同様の指導者育成がウルグアイ代表では実施されていなかったのである。現役引退後に指導の道に進んだディエゴ・フォルランなどは、タバレス監督の総指揮のもとでユース代表監督を任せるのに最適だったのではないかと思ってしまうが、15年もの間、誰も次世代の指導者育成の重要性に気づかなかったことは本当に口惜しい。

 泣いても笑っても、あと4試合。ダイレクトにカタール行きの切符を掴み取るのか、アジアとの大陸間プレーオフに挑むのか、それとも2006年大会以来の屈辱となるのか。これまで参加したW杯予選は全て通過してきた「マエストロ」を失ったウルグアイ代表の巻き返しに期待したい。(藤坂ガルシア千鶴=ブエノスアイレス通信員)

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