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【コラム】海外通信員

W杯優勝で熱狂 いかにリーグの人気につなげていくか

[ 2015年7月31日 05:30 ]

<女子W杯・米国―日本>前半16分、ハットトリックを達成し、米国代表喜ぶロイド(AP)
Photo By AP

 日本が連覇を逃した女子ワールドカップカナダ大会。準優勝に終わったなでしこジャパンの健闘ぶりには大きな賛辞が贈られ、今も余韻が続いている。一方、1999年大会以来3度目の優勝を勝ち取ったアメリカ代表は同国内でこれまでにないほどのブームを引き起こしている。

 まず現地7月5日に行われた日本との決勝戦のテレビ中継だが、視聴率調査会社ニールセンによれば2540万人もの視聴者数を記録している。これは昨年の男子ワールドカップ、アメリカ対ポルトガルで記録した1822万人を大きく上回り、アメリカのサッカー中継史上最多だ。

 元々アメリカのスポーツ・ファンの間では女子代表が世界トップ・レベルにあることはよく知られており、優勝への期待が特に強かったことが背景にあるとみられる。また、今回隣国カナダの開催で距離感がないうえ、7月4日の建国記念日の週末の日曜日、しかもプライムタイムの開催という視聴に抜群な環境であった事も大きい。愛国意識が盛り上がり、リラックスしているなかで自国の代表が世界一に臨むのだから視聴意欲が盛り上がるのも当然だろう。しかもゲーム開始後5分で2点をリードし、そのまま5-2で完勝したのだからアメリカ・ファンにとってはこれ以上にない展開だったといえる。

 その熱狂ぶりはテレビ中継だけでなく、ネットにも及び、ゲーム開始の東部時間夜7時から翌午前1時までの6時間に投稿されたアメリカ代表とワールドカップに関連したツィート数は実に2900万に達した。

 もちろんこの注目度の高さは関連メディアにも及んでいる。老舗スポーツ総合誌、スポーツ・イラストレイテッドは大会直後の号で、登場するだけで名誉といわれる表紙で、全選手23人とジル・エリス監督、さらに7人の選手の集合写真という実に同誌史上最多の25パターンを作成、発売したのだ。

 そんなチームのなかでも人気が急上昇したのが決勝でハットトリックを決めたMFカーリー・ロイドである。ゲーム開始直後に2点、さらに前半16分の3点目がハーフライン付近からのロング・シュートだったこともあり、印象が特に強くなったようだ。ゲーム開始後6時間に彼女に関するツィートはオバマ大統領の祝福も含めて12万以上もあった。またロイドによればゲーム直後メールの未読が372にものぼっていたということである。まさに新星といった感じだ。

 これを機にロイドには複数の企業が広告出演などでアプローチするであろうと、広告業界では見ている。

 一方で、既に大きな動きが出たのが美人選手として大会前から人気があったFWアレックス・モーガンだ。大会後世界的に人気のサッカー・ゲーム「Fifa」シリーズ、最新作「16」のアメリカ版で表紙をバルセロナのMFリオネル・メッシと2人で飾ることが発表された。女子選手が同ゲームの表紙に登場するのは初めて。それほどアメリカで認知された存在なのだ。

 こうして大注目されているアメリカ女子代表だが、今後の課題としてはこの盛り上がりを以下に国内リーグの人気につなげていくかが課題としてあげられている。この点については日本と同じだ。(渡辺史敏=ニューヨーク通信員)

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