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【コラム】海外通信員

アルゼンチン 魅惑の12日間

[ 2015年4月30日 05:30 ]

 アルゼンチンのサッカーファンにとって、5月3日から14日までは、まるでワールドカップ期間中のようなペースでビッグゲームが立て続けに行なわれる大忙しの12日間となる。

 というのも、もともと決まっていたリーグ戦の日程に加え、リベルタドーレスではアルゼンチン勢4チームが決勝トーナメントに進出したうえ、その1回戦でまさかのスーペルクラシコが実現。さらにCLでも、アルゼンチンに馴染みのあるチームが勝ち進むという、願ってもいなかった展開になったからだ。

 その皮切りとなるのが、5月3日(日)にリーグ第11節として行なわれるボカ・ジュニオルス対リーベルプレート。毎シーズン行なわれるカードだが、今回はちょっと事情が異なる。直後にリベルタドーレスでも対決することとなり「スーペルクラシコ3連戦」になっただけで楽しみだが、なんと今回のように、両チームがリーグ戦で「無敗のまま首位」の状態で対決するのは、100年を越えるスーペルクラシコの長い歴史においても初めてのことなのである。

 その熱戦からわずか2日後の5日(火)、チャンピオンズリーグ(以下CL)準決勝でユベントスとレアル・マドリードが対戦する。説明するまでもなく、アルゼンチンで大人気のカルロス・テベスの活躍は母国でも注目の的だが、現在「今年中にボカ復帰が実現するのでは?」という噂が絶えない背景も手伝って、レアル相手に大暴れしてくれることに期待しているファンは多い。

 同日夜からは、コパ・リベルタドーレス決勝トーナメント1回戦がスタート。ガブリエル・ミリートが監督に就任したばかりのエストゥディアンテスがインデペンディエンテ・デ・サンタフェ(コロンビア)をホームに迎える一戦は見逃せない。そして翌6日(水)、そのミリートがかつて所属していたバルセロナがCL準決勝でバイエルンと対戦。言うまでもなく、リオネル・メッシを擁するバルセロナはアルゼンチンでも人気だが、かつてアルゼンチンの指導者たちから教えを請うたことのあるペップ・グアルディオラに親近感を抱くファンが多いことも事実。だがその一方で、バイエルンには昨年のワールドカップ決勝で勝てなかったドイツ代表の主力選手たちが在籍していることなどから、アルゼンチン人としてはメッシがマヌエル・ノイアーの守るゴールにシュートを叩き込んで「ちょっとしたリベンジ」に期待したいところでもある。

 7日(木)夜、今度はリベルタドーレスでリーベルとボカが激突。昨年のコパ・スダメリカーナでは準決勝で実現した好カードが、半年後にリベルタドーレスの決勝トーナメントで再現されることになるとは一体誰が予想しただろう。

 両チームが早くも1回戦で当たることになってしまったのは、組み合わせがグループ予選の成績次第で自動的に決まる形式になっているため。ベスト16に進出したチームの中で、1位で予選を通過した8チームと2位通過した8チームで1位から16位までのランキングが作られ、1位対16位、2位対15位・・・というように対戦相手が決まるのだが、ここで首位となったボカと、最下位になってしまったリーベルが対戦するというわけだ。

 この日の話題はどうしてもスーペルクラシコに集中してしまうが、同じ日にディエゴ・ミリートが主将を務めるラシンも同大会でワンデレルス(ウルグアイ)と対戦することを忘れてはならないちなみに今回、リベルタドーレスでミリート兄弟の対決が実現するのは、エストゥディアンテスとラシンが共に決勝に進出した場合のみである。

 10日(日)はリーグ第12節でリーベル対ラシン、インデペンディエンテ対ボカのクラシコ2戦が行なわれる日。本来ならボカもリーベルも、リベルタドーレスのためにリーグでは主力を温存したいところだが、首位を争う者同士、強敵相手の試合でチーム力を落とすわけにはいかないため、全力で挑む白熱したゲーム展開が予想される。

 そして12日(火)にはバイエルン対バルセロナ、インデペンディエンテ・デ・サンタフェ対エストゥディアンテス、13日(水)はレアル・マドリード対ユベントス。14日(木)には3度目のボカ対リーベル、そしてラシン対ワンデレルスが行なわれ、欧州と南米で、それぞれ次のステージに駒を進める勝者が決まる。ただでさえ盛り上がる国内のリーグ戦に、国際カップ戦の注目カードがこんなに重なるとは、ファン冥利に尽きるというもの。

 今年のクラブワールドカップは日本開催。日本のサッカーファンの皆さんには、CLだけでなくリベルタドーレスの行方にも注目していただき、ぜひこの魅惑の12日間を一緒に楽しんでいただきたいと思う。(藤坂ガルシア千鶴=ブエノスアイレス通信員)

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