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【コラム】海外通信員

MLS放送権料が2・6倍 ソーシャルメディア活用でさらに成長へ

[ 2015年3月20日 05:30 ]

3月15日ホーム開幕戦でMLS初ゴールを決めたニューヨーク・シティーのFWビジャ(AP)
Photo By AP

 アメリカのプロ・トップリーグ、メジャーリーグ・サッカー(MLS)の2015年シーズンが3月第1週の週末に開幕した。

 全10ゲームのなかで特に注目されたのが、オーランド・シティSC対ニューヨーク・シティFCの一戦。ともに今シーズンからMLSに加入した新チーム同士の対戦ということもあるが、オーランドにはブラジル代表のカカが、ニューヨークにはスペイン代表のダビド・ビジャが所属していることが大きな要因だ。オーランドの本拠地シトラスボウルには6万2510人ものファンがつめかけた。開幕戦のスター初対決ということもあるが、MLSはこれほどのファンが集まるほどの人気となっている。

 そしてMLSの開幕にあたり、アメリカのスポーツ界ではその著しい成長ぶりが話題となっている。

 まずは今や多くのプロ・スポーツにおいて最も大きな収入源となっているテレビ放送権料だが、MLSは昨年、2015年、つまり今シーズンからのテレビ中継について4大ネットワークの一つFoxとスポーツ専門局ESPNとの間で合計年7000万ドル(約84億円)で契約を結んだ。

 昨年まではESPNとやはり4大ネットワークのNBC、さらにスペイン語放送のユニビジョンと3局との間に合計年2700万ドル(約32億4000円)だったから、一挙に2.6倍に増えた計算だ。いわゆるアメリカの4大プロ・リーグ、野球のMLB、アメリカンフットボールNFL、バスケットボールNBA、アイスホッケーNHLの放送権料にはまだ劣っているものの、これほど大きな伸びを見せているリーグはない。

 さらに昨年10月にはビール大手のハイネケンが5年間5000万ドル(約60億円)でスポンサー契約を結んだほか、UAEのエティハド航空やマーケティング企業アドボケア、メキシコ料理店チェーンのチップトールなどが次々とパートナーとなっている。それほど人気の高まりが認識されるようになっているのだ。

 ではMLSがこれほど急速に人気を高められた要因はなんだろう。Jリーグと同じ春秋制を採用しているMLSは特にシーズン後半がNFLと重なることもあってテレビでは苦戦してきた。そんなMLSが積極的に行っているのがツィッターやフェイスブックといったソーシャルメディアの積極的、かつ戦略的な活用である。

 例えばMLSのフェイスブックではほぼ3時間おき、ワールドカップ時などは最低1時間間隔で常に情報発信が行われている。ファンの関心を引き、活発な会話が生み出される仕組みになっている。

 実際、ソーシャルメディアの分析会社ゼネラル・センティメントによれば今シーズンの開幕5日間のMLS所属チームに関する会話数は昨シーズンに比べ34%アップ、2013年からは64%も増えたという。これは4大プロ・リーグがほぼ同じか逆に会話数が減っているのに対して、突出したものとなっている。

 このソーシャルメディアでのファンの活発な動きにはスポンサー企業も注目しており、ハイネケンの担当重役は広告業界誌に対し「アメリカのサッカー・ファンはツィッターのような大きなメディア企業は彼らの会話が出ても許される場所なんだということを気づいたんだと思う」とコメントしていた。

 ソーシャルメディア活用を武器に、MLSが今後さらにどんな成長をしていくか注目したい。(渡辺史敏=ニューヨーク通信員)

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