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【コラム】海外通信員

ブラジルW杯の二の舞か?リオ五輪への不安

[ 2015年2月20日 05:30 ]

建設が進むリオデジャネイロ市内の五輪競技会場
Photo By AP

 2015年が始まった。すなわち来年はもうリオ五輪ということだ。昨年、W杯ブラジル大会であたふたした悪夢が、どうやらまた繰り返されそうな気配がしてきている。

 工事の遅れが指摘されているのは、W杯で起こったようにいつものことなのだが。

 セーリング会場に予定されているグアナバラ湾はポン・デ・アスーカルという奇岩のあるリオを代表する名所も含む観光地であるとともに、水質汚染で悪名高い場所である。

 グアナバラ湾は、約1100万人以上の人口を抱える集水域の終点で、下水道施設が未整備なファヴェーラと呼ばれる低所得階層地区が多く、日量120万トンを越す生活排水が未処理のままグアナバラ湾に流入している。

 この問題は長きに渡っており、実は日本も浄化のために一役買っている。94年にJICA(国際協力機構)が314.75億円の円借款して水質汚染改善のプロジェクトが始まったが、あれから20年、プロジェクトは延長されながらも、いまだに解決しない悪名高きドブ湾なのだ。リオ市にとってグアナバラ湾の浄化は悲願であり、五輪立候補の公約に挙げていたが、数十年手をこまねいている問題を魔法のように解決する術はやはりなかった。リオ五輪までに浄化は無理とリオのパエス市長はお手上げを認めた。

 とはいえ、ご安心を。セーリング会場は衛生面で劣悪状態の場所から離れたところで開催されるので、水中に落下しても大丈夫らしい。

 また、五輪の主な会場となるバッハ・ダ・チジュッカ地区は同じリオ市内とはいえ、市街地から30キロほど離れた新開発地区で、鉄道は通っておらず、車かバスでしか移動できない。現在、急ピッチで地下鉄工事が行われているが、既に当初の予定から半年遅れている。一応、五輪開始前の6月に開通予定だが、サッカーチームで有名なフラメンゴのあるガヴェア駅は五輪後しか使用できないことが既に決まっており、今の調子で遅れ続ければ、市街地からバッハまでの地下鉄が五輪後しか全線開通しないという最悪の結末の可能性もある。

 ちなみに車でバッハまで移動する場合、現在街のあちこちが工事中ということもあり約2時間かかることもあり、もしも地下鉄が間に合わない場合、リオの街は大渋滞になることはまちがいない。

 リオは奇岩の多い街で、それこそがリオの景観の美しさでもあるのだが、鉄道にはやっかいだ。トンネルを掘らなければバッハまで辿り着けないのだが、昨年5月にイパネマ地区のトンネル掘削の最中、地盤沈下と近隣のマンションにひびが入ったことで工事の停止が長く続いた。再開したのは、なんと11月。リオ州知事のルイス・フェルナンド・ペゾンは「すべて想定内。五輪までに問題なく間に合う」と言っているが、一番怖いのは突貫工事で後から問題が発覚することだ。W杯でも期限を守るため急ピッチで工事が進められたが、注意ミスによる事故が起こったことも忘れてはいけない。

 また、1904年のセントルイスオリンピック以来112年ぶりに実施されるゴルフは、ブラジルでそれほどポピュラーな競技ではなく、今回新たにオリンピック用のコースを新設すると張り切っていたのだが、こちらも予定通りには進んでいない。本来五輪開催イヤーの1年前にリハーサルをかねたビッグトーナメントを五輪と同じ会場で開催するとブラジルゴルフ連盟のパウロ・セーザル・パシェコ会長は明言していたのだが、肝心のコースが完成するのは来年か。

 いつも心配事が次々と出てくるのだが、今年2月1日には政府、リオ州、リオ市の3機関が合体したOlympic Public Authority(公的五輪機関で委員長は大統領任命)、通称APOのフェルナンド・アゼヴェード委員長は、不安材料はありながらも、「これまでの五輪は100%公的資金でまかなっていたが、リオ五輪では民間資金を50%というかつてないプランを実行している。我々は理想のプラン実現に向けて進んでいるところだ」と言っていた。

 ところが、委員長が2月9日にまさかの辞任表明。なかなか事はスムーズに進んでいない。W杯の二の舞が目に浮かんでくる。とりあえず、サッカー会場だけは準備OKということで、ご安心を。

 リオ五輪のサッカー競技は2週間で男子32、女子26試合の全58試合。試合会場は当初の予定ではリオ市のマラカナン・スタジアム以外、サンパウロ、ベロ・オリゾンテ、ブラジリア、サルヴァドールに加えアマゾン地方のマナウス。しかし、ここでFIFAが短期開催のスケジュールの中、リオから4270キロ離れたマナウスへの移動の困難さ理由に異議を唱えた。それに対して、アマゾナス州政府、マナウス市はなんとか外されないようスイスまで直訴に行く構えをしている。最終決定は3月16日ジュネーブのFIFA本部でなされる予定。CBF(ブラジルサッカー連盟)も入っている五輪委員会は、スポンサー、州政府、州協会、市との関係上、マナウスを入れたいところ。(大野美夏=サンパウロ通信員)

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