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【コラム】海外通信員

英国で活躍するために必要な選手の適応力

[ 2014年4月26日 05:30 ]

チェルシー・レディース(イングランド)で活躍する日本代表FW大儀見優季
Photo By 提供写真

 日本代表FW大儀見優季が所属するチェルシー・レディースは4月20日、イングランド・スーパーリーグ第2節で昨季王者のリヴァプールをホームに迎えた。結果は0―0のスコアレスドローでおわったが、雨の中でお互いのスタイルがぶつかりあう白熱したゲーム内容だった。大儀見はファウルすれすれの強烈なタックルにもあたり負けせずに攻撃の起点となり、多くのチャンスを作りだしていた。昨季はなかなかボールが回ってこなかった状況と比べると、チーム状態は大きく好転している。

 チェルシーは今季数人の選手を補強し、その中にはINAC神戸から移籍した韓国代表のチ・ソヨンも含まれている。彼女が昨年のチームとの違いを生み出していることは誰の目にもあきらかだ。この日もフィジカルを全面におしだしてくるリヴァプールDF陣を相手にして、しなやかなボールタッチとスルーパスで抜群の存在感を見せていた。

 試合終盤、チェルシーが何度もチャンスをつくった。チ・ソヨンはペナルティーエリア内でドリブルを仕掛け、相手DFのタックルが足にかかり、倒されてファウルかと思われた。しかし、プレーはそのまま流され、いったん途切れた時点で、審判は倒れたチ・ヨソンにイエローカードを提示した。前半に警告をすでに受けていたため、二枚目のカードで退場となった。

 スタンドからは、彼女が判定に対して抗議を唱えたことでカードをもらったように見えたが、試合後、大儀見に真相を聞くと「シミュレーションに対してのイエローだったようです。前半のイエローカードも何か言ったわけではなくて、わざと倒れたことがtwice(二回目)だと主審は言っていました。ソヨンにはまだ抗議するような英語力はないです」と、答えてくれた。

 前半のイエローカードを受けた際やその他の場面においても、ファウルすれすれのプレー後に主審と選手のあいだで何らかの言葉がかわされていた。チ・ソヨンに主審と会話できる英語力があれば、すべてが解決できた問題ではないかもしれないが、今後の試合において英国での環境によりなじんでいくためには、コミュニケーション能力の向上が、成功への条件になることを示唆していた場面だった。

 言葉の壁をピッチ内の実力だけで乗り越えることは可能だが、英国にやってくる選手たちは、どんなスター選手でさえも、言語習得の重要性を語っている。昨季からチェルシーに加入している大儀見は、地元メディアのインタビューは英語で対応するなど、ドイツで培った経験を多いにいかしている。

 日本を飛び出し海外リーグに挑戦している日本人サッカー選手は、男女、プロとアマをあわせると、すでに100人を超えている。言語習得、特に英語は、海外で活躍するために必要な適応力を高めてくれるだろう。フットボールで結果をだすということは、ピッチ内だけの話ではない。(竹山友陽=ロンドン通信員)

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