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【コラム】海外通信員

予選敗退の可能性消えず スキャンダルに揺れる米国代表

[ 2013年3月31日 06:00 ]

3月26日W杯北中米カリブ海最終予選・メキシコ戦で指示を出す米国代表クリンスマン監督
Photo By AP

 3月22日にアメリカ・コロラド州コマース・シティで開催された2014年ワールドカップ北中米カリブ海(CONCACAF)予選第4ラウンド、最終予選のアメリカ対コスタリカは吹雪の中での1戦となった。

 時にフィールドの反対側が見えなくなり、グラウンダーのボールが止まるほどの降雪に両チーム苦労したが、アメリカは前半17分オランダAZ所属のFWジョジー・アルティドールが放ったミドル・シュートのこぼれ球をイングランド・トットナム所属のMFクリント・デンプシーが押し込んで先制。この1点を守りきってアメリカの勝利に終わった。

 これでアメリカは成績を1勝1敗とし、1勝1分けのホンジュラスに次ぐ2位になっている。大半の時間帯でアメリカがボールを支配することに成功、無難に勝ち点3を挙げた形だ。しかしゲーム前、メディアやファンの間では目先の勝利どころかチームが崩壊しかけているのではという懸念が広がっていた。

 2011年に就任した元ドイツ代表ユルゲン・クリンスマン監督に対して不満を持つ選手がおり、さらにアメリカ生まれの選手とドイツ生まれの選手の間でも軋轢(あつれき)があるというスキャンダルが出ていたためだ。総合スポーツ誌スポーティング・ニュースがゲーム直前の19日にスクープした記事が発端となっている。

 記事によれば匿名の選手が、クリンスマンが大事なゲームに対する準備を怠ってきたと話し、さらに「よくクリンスマンに先発に選ばれている選手はゲーム前に練習をしない」とチームメイトまで批判したという。

 1―2で敗れた最終予選第1戦(2012年2月6日)のホンジュラス戦のハーフタイムにクリンスマンがろくな指示をしなかったという批判や、ダイエットやコンディショニングばかりに力点がおかれ「トレーニング過多で、あまり指導がない」というコメントなどを掲載。

 さらに、「彼らは美しいゲームをすることを望んでいるが、自分たちはドイツみたいなテクニカルなチームじゃない。スペインやブラジルでもない。自分たちの長所はハードにプレーし、闘い、競ることだ」とチームの方針にまっ向から対立するような意見まであった。

 一方でドイツ生まれの選手が「彼らはここにいることを楽しんでいるようだ。でも代表としてどうプレーすべきかを気にしていないように見える」というチームメイトを非難する声も掲載されている。

 優位だとみられていたホンジュラス戦をアウェーで落としたとはいえ、10月まで続く長丁場の最終予選第2戦前にこんな批判が、しかもこれほど多く出る事態はまともとはいえない。それだけにコスタリカ戦の行方が注目されたのだ。

 結果勝利したのだからほっと一安心したいところだが、悪天候により両チームともダイナミックな動きが封じられ、本来の実力が出せたとは言いがたい。また圧倒的にボールを支配したとはいえ、不用意にカウンターをくらう場面も見られた。

 3月26日に最大のライバル、メキシコとアウェー戦でも0-0で引き分けた。予選敗退の可能性は消えず、苦境はまだまだつづきそうだ。(渡辺史敏=ニューヨーク通信員)

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