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【コラム】海外通信員

評価分かれる長友 あなたは?

[ 2012年10月5日 06:00 ]

<インテル・フィオレンティーナ>クアドラード(左)と激しく競り合いながら左サイドをドリブル突破しようとする長友
Photo By スポニチ

 9月30日、フィオレンティーナ戦での長友のパフォーマンスは素晴らしかった。卓越したスピードと突破力を武器に、ユベントス戦でも対面のアサモアを押しこんでいたコロンビア代表クアドラードを、タフなランニングで完封。正確で速いサイドチェンジを放って、あわや追加点(最終的にはミリートがクロスバーに当てた)というカウンターも演出し、敵味方ともに疲労が噴き出す試合終盤には、何度もオーバーラップを繰り返し相手の攻撃の流れを切っていた。2―1で勝利。

 失点のシーンではロメロに着き遅れてしまったが、フリーになっていた相手MF同時をみると同時に、本来の役割である左サイドもケアしなければならなかったから、着き遅れるのも仕方がなかったのではないか。ともかく、チームも長友個人としても、ビッグクラブらしい堅さを見せて勝利していたように思う。

 しかし地元紙をチェックした翌朝、観戦後の心地よい余韻は一気に吹っ飛んだ。ガゼッタ・デッロ・スポルト採点5.5(10点満点、及第点は6)、コリエレ・デッロ・スポルトに至っては5だ。試合後のサン・シーロでは「長友は良かったな」と言って通路を降りて行くファンは何人もいたし、行きつけのバールでは「昨日の長友は8だぜ!」と知己の店員に言われた。この評価の剥離はなんだ。「いや、ガゼッタは5.5付けてたんだけど…」というと、「それはおかしい」と居合わせたインテリスタのおじさんが話に割って入り、議論になっていた。

 また試合を良く見てなかったんじゃないのか、という思いはとりあえず脇において、冷静に2紙の評価を読むことにする。そこからは彼らが長友をどう見ているか、そして何を要求していたかについて、筋が通っているかはともかく一応はっきりと分かる。

 「ストラマッチョーニ監督は、彼を高い位置に貼らせてクアドラードを押し込ませたかったようだが、問題は彼が長友を通過してきたということだ(ガゼッタ・デッロ・スポルト)」

 「クアドラードを攻め込んで、高い位置で相手を押し込まないといけなかった。たしかに相手DFを退場に追い込んだものの、他の攻撃の場面ではいいチャンスをことごとく潰し、そして絞るのに遅れてDFに穴を作り、失点を招いた(コリエレ・デッロ・スポルト)」

 ようは「攻撃で押し込むのがおまえの役割だっただろうに、引いてんじゃねえよ」ということだ。彼らにとって長友は『攻撃の人』として認識されているのである。

 3バックの導入にあたってストラマッチョーニ監督は、「長友やペレイラのサイドでの推進力は活かしたい」と語っていたのは事実だ。そしてフィオレンティーナ戦ではペレイラを取り、長友を左に回した。日頃から長友の守備を批判してきた記者たちにとって、クアドラードをスピードで抑えるための選択だったという想像は付かず、「攻撃で押し込むために長友を使ったに違いない」と解釈されたのだろう。

 それでも長友は特に後半、何度も攻め上がってCKも何度かゲットしていたと思うのだが、直接得点に結びつく仕事をしなければ彼らにとっては不合格。前節のキエーボ戦で、攻撃のチャンスが数少ない中でペレイラの先制をお膳立てすれば、ガゼッタは6.5をポンとくれた。そういう仕事を毎試合しろと、という要求が感じられる。これもまた一つの見方だ。

 そこまでになったらマンチェスターCに移籍したマイコンや、バルセロナのアウベスらの領域だと思うのだが、そういう無茶な要求を周囲から突きつけられるのがビッグクラブである。システム変更により一列前にポジションが変われば、また要求も違う。ハードルはどんどん上がるが、「いつものサイドバックのポジションよりも高い位置を取れるんで、アシストだったり、自分がゴールを取るという仕事もやって行きたいなと、いつも以上に思います」と長友は語っている。彼の向上心に期待したい。

 なおイタリアの報道陣も、全てが前述の2紙のような見方をしていたわけではない。主要一般紙のひとつイル・ジョルナーレは7を付け「常にハイレベルなプレイをしていた。クアドラードと良いマッチアップを披露し、チームが守りに入る際には素早く5枚目のDFへと役目を切り替えていた」と評価していた。

 また自らは7を付けたインテルファン向けスポーツ系商業サイト「FCINTER1908」は、各紙の評点・評価をまとめた記事の中で「ガゼッタが長友を及第点以下と批評したが、さすがに見識違いではないか?」と疑問を呈していた。自分が長友の評点をつけるとしたら、失点に絡んでいたと考えても6.5かと思うが、中継をご覧になっていた日本のファンの皆さんはどういう感想を持たれましたか?(神尾光臣=イタリア通信員)

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