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【コラム】海外通信員

吉田「移籍できればいいことです」 VVVフェンロ最後の試合!?

[ 2011年12月24日 06:00 ]

19日に帰国したVVVフェンロの吉田
Photo By スポニチ

 12月17日、VVVフェンロはアウェーでNECと対戦した。結果は2-0でNECの勝利。前節で勝利していたVVVだったが、2連勝はなからなかった。この日も吉田麻也はセンターバックとして90分間フル出場。そして、この試合が2011年最後の試合でもあった。

 今でこそ、日本代表のセンターバックとして定着した感があるが、始まりは、わずか1年前、2011年に入ってからだった。1月にカタールで開催されたアジアカップに招集され、ザッケローニ監督の下でスタメンで使われるようになった。あれから、わずか1年。この2011年は、吉田のキャリアにとっても、大きな転機だった。

 「代表では、すごく充実した日々を送れました」。

 NEC戦後、吉田は今年を振り返った。

 「自分がレベルアップしているというのを感じることができました。できればそれを、チーム(VVV)にもっと還元したかったんですけど。なかなかうまくいかないというか。結果に結び付けられなかった」。

 昨シーズン後半戦は、1部2部入れ替え戦に回りながら、残留を果たした。

 「残留できた後、今シーズンは、自分のイメージでは、いい方向に進んでいくと思っていました。でもなかなかチームはうまくいかない。ただ、個人的には、代表と掛け持ちしながらやって行く中では、もっとコンディションが崩れるかなと思っていましたが、逆にパフォーマンスは上がっていきました。11月の終わりくらいから、12月の頭、最後の代表の試合が終わってから、ちょっと自分のパフォーマンスが落ちましたけど、盛り返せました」。

 確かにこの日、NEC戦で吉田が見せたプレーは、堂々たるものだった。負けはしたものの、2失点は、いずれも直接FKからスーパーなゴールを決められたもの。15位と、相手は決して上位チームではないものの、守備面では、大きな破綻なく、チームとしてもよく守れていた。

 VVVは、デブック前監督が辞任した後、前節からコーチだったブーセンが暫定監督に就任していた。同時にこの2試合、吉田の相方のCBが、MFのメーウウィスになっていた。メーウウィスはMFタイプなだけに、ボールサイドへとチェックに行くタイミングが早い。結果、「かなり尻拭いさせられる」(吉田)シチュエーションも少なくなかった。しかし、最後は吉田が文字通り壁となって立ちはだかり、NECの攻撃を弾き返していた。

 「今年最後の試合なんで、いい形で終わりたかった。もちろん勝ちたかったですけど、とにかく自分のところからはやられないように意識していました。実際に失点はフリーキックからだけ。守備自体は悪くなかったと思います」。

 ただ、点が入らない。この日は、NEC側が後半7分、退場者を出し、10人対11人になりながら、VVVはゴールを奪えなかった。

 「前半、特に引きすぎて、ボールを奪ってもなかなか前に行けなくて。すぐにボールを失うことも多かった。相手が退場してからは、僕はなるべくシンプルに、(前線の両サイドの)ムサとヤニク(・ウィルドスホット)にパスして、1対1なり、コンビネーションなりで崩していければ、と思っていました。でも、サイドの精度も良くなかったですし、決定的なチャンスも、僕も含めてあったんですが。アンラッキーな部分もありました」。

 前線の選手がゴールを奪えない中で、吉田自身にもCKからヘディングで合わせるなど、チャンスがあった。特に後半8分、シュートの跳ね返りに飛び込んで右足で押し込もうとした場面。後半40分にクリアが小さくなったところで左足のボレーで狙った場面。しかしそれぞれ、ゴール上へ、左へと枠を外していた。吉田は今季ここまで2得点。だが、ポテンシャルを考えれば、もっとゴールを取っていい。

 「相手が一人少なくなっても勝ちきれない、点を取れないというのはね。だから(リーグ順位で)この位置にいると思いますけど」と、吉田。ならば、もはや自分で取るしかないだろう。意欲はある。DFだけにチャンスは少ないが、あともう少し自信と余裕を持ってシュートを打っていきたいところだ。

 NEC戦で敗れたVVVは現在17位。ただ、低迷するVVVにあっても、吉田はモチベーションを切らさずに戦い続けた。

 「毎試合、自分に言い聞かせていました。この試合で活躍して、移籍するんだって。いつもそのつもりでやっています」。

 この日の吉田の充実したパフォーマンスは、その言葉に説得力を持たせるものだった。この日は年内最終戦。「別に、終わったとかいう感じはないですよ」と言う。「次に、移籍できれば、それはもちろん、いいことです。でもフェンロに残っても、守備のトレーニングができるとか、プラスに考えてやるだけです」。

 「今年1年を通して、すごく充実していました」と語った吉田。そろそろ、ステップアップの時期を迎えているようにも思うが、どうだろうか。この日のNEC戦がVVVでの最後の試合になるのかどうか。来年1月からの動向も注目される。(堀秀年=ロッテルダム通信員)

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