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【コラム】海外通信員

吉田麻也とカレンのVVV「とりあえず。勝ちたい」

[ 2011年10月19日 06:00 ]

 10月16日のフェイエノールト対VVVの試合が終わった直後、選手への取材へ行こうとスタジアムの外に出ると、VVVのサポーターが声を掛けてきた。アウェーゲームにも赴く、熱心なサポーターだ。

 「麻也には本当に申し訳なく思っている。いつも一生懸命にプレーしていて、いいプレーをしてくれている。それでもチームが結果を出せない。ボビーさん(カレンのこと)も同じ。ふたりはあんなに頑張ってくれているのに……。本当に残念だし、申し訳ない」。

 この日、VVVはフェイエノールトに0―4で敗れた。前半は少しオープンな展開になり、互角に近い試合を演じていたVVVだが、ムサが43分に2枚目のイエローを提示されて退場すると、チームは崩壊していった。これでVVVは、9試合3分け6敗で勝ち点3。得点7失点25で17位になった。苦しむチームの中にあって、吉田麻也とカレン・ロバートのパフォーマンス自体は上がってきている。

 「もちろん勝ってないし、失点しまくっているんで、満足はしていません。でも、昨年よりははるかにいいパフォーマンスを見せられているとは思います」と吉田は言う。

 吉田のパフォーマンスが明らかに上がってきたのは、今季に入ってから。昨年までケガで長期離脱していた吉田が身体的に完全にフィットし、試合勘もまた完璧に戻るまでに、やはりそれなりに時間が掛かった、というのが実際のところだったようだ。夏にしっかり体のケアに努め、痛みを取ったことが、現在の充実したパフォーマンスにもつながっている。

 「代表に行ったり帰ったり、というのにも慣れました。時差もそんなに感じなくなってきたし、機内の過ごし方とか、こっちの試合が終わって、代表で早くフィットするためにやること、代表が終わってこっちに帰ってきて早くフィットさせるためにやること。そういったことを自分の中でちょっとずつトライして、気を付けてやっていたら、慣れてきました。あまりにも体がダルいとか、感じることはなくなりました」。

 また、オランダリーグの中での経験値も増えてきている。

 「中でも本当の上位チーム、アヤックス、PSV、トゥエンテと比べると、やはりきょうのフェイエノールトとか、AZとか。AZは強いんですけど、夏にストライカーがいなくなったばかりなので。そのあたりのストライカーであれば、自分の中では余裕を持ってプレーできるな、というのはあります。トップチームの選手以外にはしっかり対応できるようにはなってきたので、個人的にはもっと安定したパフォーマンスを見せていかないといけないと思います」。

 一方、カレンも、調子は悪くない。

 「結構、体は動けましたし、前半はやってて楽しかったです。1点決められても、チャンスはたくさんあったから、まだいけるんじゃないかっていう雰囲気はあったんですけど。でも、退場者が出ると、厳しいですね」。

 マッチアップしたフェイエノールトの右SBレールダムを抜き去ってペナルティエリアに侵入するなど、好プレーも見せていた。

 「個人としては、決して悪くないので、後は、得点。勝つことでチーム自体が浮上していけば、自分としてやりたいこともできてくると思う。今は、やりたくても、できないことがたくさんあるので。とにかく勝って、きっかけを作っていかないと。チーム事情が良くないので、次はホーム、RKC戦ですか、そこは絶対勝たないとまずいですね。ホームだし、1勝ですね、とりあえず」。

 次節は、RKCワールワイク戦だ。昇格組だが、現在8位と好調。一方のVVVは未勝利だけに、チーム状態が良いわけはない。
 「練習の入り方とか、雰囲気とか、あまり良くないですね」と、吉田。

 「だから、ボール回しの時とか、アホになってやろうとはしてますけど、なかなか難しいです。でも吹っ切れるしかないでしょう、これだけやられたら」。

 たとえ相手が好調でも、VVVとしては、ホームだけに、なんとしても勝たなければいけない試合だ。カードとしては地味だが、一部残留へ向けて、今後のVVVにとって非常に重要な試合になる。

 「勝ちたいです、とりあえず。勝ちたい」。

 吉田は何度も口にしていた。(堀秀年=ロッテルダム通信員)

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