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【コラム】海外通信員

良くも悪くも、大きく姿を変えつつあるミラン

[ 2017年8月31日 05:30 ]

主将としてチームの中で存在感を見せているACミランのDFボヌッチ
Photo By AP

 本田圭佑が5月末にミランの退団を発表してから、3カ月が経過した。そして今、そのミランはものすごい勢いで様変わりを果たしている。

 まずは各種報道でご存知の通り、彼らは大型補強を果たした。中国人オーナーに代わってから経営をつかさどるマルコ・ファッソーネCEOと、チームの補強を統括するマッシモ・ミラベッリ強化部長は積極的に動いた。まずはすでに獲得が決まっていたマテオ・ムサッキオをビジャレアルから獲得したのに続いて、海外の有力クラブが触手を伸ばし、インテルの獲得目標となっていた左SBのリカルド・ロドリゲスを呼び寄せた。そして中盤には、昨シーズンはアタランタの5位躍進の原動力となったコートジボワール代表MFフランク・ケシエをローマとの争奪戦の末に獲得し、さらにはロナウド2世とも称されるポルトガル代表の若きFWアンドレ・シウバを引っ張ってきた。

 6月なかばの時点ですでに4人の大型補強。この段階で地元のミラニスタたちは大喜びしていたのだが、ミランは大型補強をさらに続けた。アタランタからは前述のケシエだけでは飽き足らず、右アウトサイドとして攻守に大車輪の活躍を見せていたアンドレア・コンティを獲得。ラツィオからは中盤の底として堅実なルーカス・ビリアを引き抜き、新10番としてトルコ代表FWハカン・チャノハノールを獲得。そして何より人々を驚かせたのは、ユベントスと喧嘩別れしたイタリア代表DFレオナルド・ボヌッチまで獲得してしまったことだ。選手獲得のために投下された移籍金は1億8950万ユーロにものぼった。

 これを受けて、サンシーロの雰囲気が激変した。シルビオ・ベルルスコーニ名誉会長が率いる前経営陣時代は、金を出し渋るフロントと成績の低迷にへきえきとして、スタジアムを離れていたミラニスタがこの大型補強を機に戻ってきた。年間シートの販売初日には本社ビルのチケット売り場に長蛇の列ができ、販売1週目で昨季の16500席を大きく上回る25000席を販売。そして今月3日に行われた欧州リーグ予選のウニベルシタテア・クライオバ戦第2レグには、バカンスシーズンでミラノには人が減っているにも関わらず60000人以上がサンシーロに詰めかけた。

 経営陣が変わったことにより資金繰りに変化が生まれ、その効果が早速でてきた。この思い切った変化は、とりあえず奏功したと言える。もっともこの新生ミランが、今後も順風満帆に改革の歩みを続けられるかどうかについては、まだいくつかの不確定要素が残っている。

 まずはチーム作り。ビンチェンツォ・モンテッラ監督は昨シーズンの1年間でチームを固めることに成功したが、多くの選手が入ってきたことによりそれを一からやり直さなければならなくなった。アンドレ・シウバやチャノハノールなどセリエA初挑戦組についても、順応には時間がかかるだろう。指揮官がそれをうまくマネジメントできるのか。セリエA第2節カリアリ戦の時点では、まだ相手のカウンターなどに守備のもろさを見せていた。

 次に、資金繰りそのものへの不安だ。現在、ミランが大型補強を可能とした資金を手にすることができた理由は、投資ファンドなどからの借入金や信用貸付を受けたからである。したがってそれは今後、返済の対象となる。ファッソーネCEOはチームを4位以内に入賞させて、興行収入の多いチャンピオンズリーグへの参戦(来シーズンからイタリアの出場枠は広がる)を目標としており、また中国にマーケティング部門を設立し商業収入を出そうと目論んでいる。しかしそのプランが頓挫した場合、最悪のケースでは再びクラブは売却へと動かなければならなくなる恐れもある。

 クラブ内は、もっと派手な形で色々と変化している。ベルルスコーニ名誉会長やアドリアーノ・ガッリアーニ副会長と関係の深かった人物はミラネッロを去り、スカウト陣や下部組織のコーチの間でも積極的に人が入れ替わっている。良くも悪くも大きく姿を変えつつあるミランは、一体どういう方向へと進むのか。(神尾光臣=イタリア通信員)

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