【コラム】海外通信員
今季のスペインリーグを振り返って
長かったリーガエスパニョーラが5月13日に終了したが、リーグ終盤は混戦となり、優勝争い、CL、EL出場権争い、そして1部残留争いに多くのドラマが起こった。
スペインリーグ優勝は、予想通りにレアル・マドリードとFCバルセロナの2強の一騎打ちとなったが、勝ち点4差で迎えた4月21日のリーグ第35節のスペインダービー“エル・クラシコ”で、レアルがバルサのホームで2−1と競り勝ったのが決め手となり、4季ぶり通算32度目のリーグ優勝を決めた。しかもレアルは09〜10シーズンにバルサが作った勝ち点99を更新するリーグ最多勝ち点100(ホーム50+アウェー50)の新記録と、さらに1989〜90シーズンにレアル自身が作った109ゴールを大幅に更新するリーグ最多121ゴールの新記録を達成した。
一方、バルサは、メッシがリーグ史上最多50ゴールを決め、クリスティアーノ・ロナウド(46ゴール)を抑えてリーグ新記録の得点王に輝いたものの、勝ち点91(ホーム52+アウェー39)で4季連続のリーグ優勝を逃して2位に甘んじた。今季のバルサはアウェーで取りこぼしが多かった上に、シーズンを通してケガ人続出だったのが痛かった。しかも、リーグ終盤でリーグ優勝を賭けた直接対決を行った疲れもあり、その直後のCL準決勝で予想に反してレアル、バルサがともに敗退し、CL決勝で“エル・クラシコ”対決が実現しなくなった。
CL出場権の残り2つと、EL出場権争いも最後までもつれたが、バレンシアが2強のレアル、バルサにかなり差をつけられたものの、3位に入ってCL本戦出場権を獲得。4位にはスペインの”マンチェスターC”と呼ばれるマラガがこの2季で豊富な資金で補強したチームが着実に力をつけてクラブ史上初のCL出場権(予備戦から)を獲得した。EL出場権は5位にアトレティコ・デ・マドリード、今季のリーグで旋風を起こしたレバンテが6位に入り、10位ながら“エル・ロコ”(サッカーに熱狂する人)の愛称のアルゼンチン人のマルセロ・ビエルサ監督の下で刺激を受けてEL決勝とスペイン国王杯決勝に進出したビルバオの3チームが獲得した。
一方、1部残留争いはラシン・サンタンデルを除く、ラジョ・バジェカーノ、サラゴサ、グラナダ、ビジャレアル、スポルティング・デ・ヒホンの5チームが最終38節までもつれ込み、18位ビジャレアル、19位スポルティング・デ・ヒホン、20位ラシン・サンタンデルの3チームが2部降格となった。特に悲劇だったのは今季のCLに出場していたビジャレアルが、後半終了間際43分に失点し、後半ロスタイム47分にラジョ・バジェカーノがゴールを決めたことで、土壇場で2部落ちした。サッカーでは常に試合開始5分と終了5分が良くも悪くも“危険な時間帯”と言われるが正にその通りだった。
今季を振り返ると、2部降格となったビジャレアル、スポルティング・デ・ヒホン、ラシン・サンタンデルを始め、アトレティコ、マジョルカ、セビージャ、サラゴサ、グラナダの8チームがシーズン途中に監督交代劇が起こったが、監督交代で成功したのはサラゴサとアトレティコだろう。
サラゴサは、メキシコ人のハビエル・アギーレ監督が指揮したチームがリーグ最下位まで落ちた昨年12月末に引き継いだマノーロ・ヒメネス監督が、選手達ばかりかサラゴサファンのネガティブだった精神状態を回復させた。“Si se puede!”(=それができる!)をスローガンに強い信念を持って少しずつチームを立て直して劇的にリーグ最終節で1部残留を決めた。
アトレティコは、今季からグレゴリオ・マンサーノ監督が就任して上位を目指していたが、リーグ10位に低迷していた昨年12月中旬に解任され、アルゼンチン人のディエゴ・シメオネ監督が就任した。現役時代にアトレティコで2期(1994〜97、2003〜05)にプレーし、特に第1期の95〜96シーズンにスペインリーグと国王杯の2冠を達成した英雄の一人だった“エル・チョロ”(=インディオ)の愛称でから親しまれているシメオネ監督は、アトレティコファンの熱い気質を十分理解し、支持を受けた強みもあった。攻撃面はもとより、守備面を立て直して失点を少なくし、何よりも選手にモチベーションと誇りを取り戻すことを求め、チームはリアクションを起こしてリーグ5位、そして2季振り2度目のEL優勝を果たした。特に今季ポルトから移籍してきた“ティグレ”(=タイガー、虎)の愛称のコロンビア代表FWファルカオが通算36ゴール(リーグ24+EL12)を決めて、フォルランとクン・アグエロの穴を埋める大活躍だった。
まだ今季は5月25日のスペイン国王杯決勝バルサ−ビルバオ戦や、2部Aリーグ以下の試合が残っているものの、各クラブは来季に向けてのチームプランを作り、監督、選手の移動が始める。そして、4月27日に今季限りで退任することを発表したバルサのグアルディオラ監督の姿が来季は見られないのは残念だ。この4季で高いレベルのテクニックでパスワークを駆使したスペクタクルな攻撃サッカーを披露して通算13冠を獲得し、世界最強チームを作り上げたグアルディオラ監督がバルサを去るのは寂しい限りだが、4季振りにレアルにリーグ優勝をもたらしたモウリーニョ監督が「バルサのプレースタイルだけがサッカーではない」と強調したように、サッカーにはいろんなプレースタイルがあり、多くの戦術が存在する。
来季からグアルディオラ監督に代わってバルサを引き継ぐのは彼の右腕だったティト・ビラノバ助監督だ。彼が脚光を浴びたのは、今季初めの昨年8月17日にカンプノウ・スタジアムで行われたスペインスーパー杯第2戦バルサ−レアル戦(3−2)の試合終了間際にマルセロがセスク・ファブレガスに強ファールして一発レッドカードになり、両チームの選手達がもみ合いになった際に、モウリーニョ監督ティト・ビラノバ助監督の右目に背後から指を突っ込み、怒った彼がモウリーニョ監督の後頭部を叩いた事件だった。この事件でティト・ビラノバ助監督がモウリーニョ監督と対等に張り合ったことで一気にバルサファンの間でヒーローになった。ティト・ビラノバ助監督はグアルディオラ監督同様にサッカーの虫で、彼以上に戦術面に長けた沈着冷静なバルサの陰の指揮官と言われているだけに、来季はどんなバルサになるのか、ティト・ビラノバ新監督のバルサvsモウリーニョ監督のレアルの因縁対決、そして来季のスペインリーグがどんな展開となるのか早くも楽しみだ。(小田郁子=バルセロナ通信員)
[ 2012年5月25日 ]
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