【コラム】海外通信員

【アルゼンチンコラム】パリ五輪出場権獲得 メッシの招集はあるのか?

[ 2024年2月29日 07:30 ]

U-23アルゼンチン代表マスチェラーノ監督
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 1月20日から2月11日までの3週間にわたってベネズエラで行われたプレオリンピコ(男子サッカー五輪予選を兼ねたU23南米選手権)で準優勝し、今年7月26日から開催されるパリオリンピックへの出場権を獲得したU23アルゼンチン代表。

 ハビエル・マスチェラーノ監督率いる同チームはグループステージを2勝2分の戦績で首位通過し、4カ国による総当たり戦の決勝ステージでは2試合連続ドローを経て最終日にブラジルと対戦。1-0の勝利をおさめて2位となり、優勝こそ逃したものの、目標であった五輪出場権を勝ち取ったこと、そして宿敵ブラジルを打ち負かして予選落ちさせたことなどから選手たちの喜びもひとしお。大会期間中はマスチェラーノ監督の采配を疑問視する声が高まった国内のサッカーファンの間でも、わずか2枠の1つを勝ち取ったチームの功績が高く評価された。

 そしてブラジル戦勝利の興奮が冷めやらない中、アルゼンチンのスポーツ専門メディアの間では、リオネル・メッシとアンヘル・ディ・マリアの五輪出場に関する話題で持ちきりとなった。試合直後のインタビューで、マスチェラーノ監督が「私には監督としてメッシとディ・マリアを五輪に招待する義務がある」と語ったからだ。

 2008年の北京五輪で金メダルを獲得した2人について、マスチェラーノ監督は昨年9月にも「彼らがU23代表に合流してパリ五輪に出場したらとても光栄なこと」と語っていたが、予選突破が決まった直後に改めて彼らを歓迎する姿勢を明らかにしたため、このテーマが再び脚光を集めることになったのである。

 だがディ・マリアの場合は、今年6月のコパ・アメリカを最後にアルゼンチン代表から引退する決意を表明しており、五輪参加について聞かれても「その可能性があるとは思えない。もう(コパをもって引退する)決断を下したからだ」と断言していることから実現は難しそうだ。

 一方のメッシについては昨年10月、アルゼンチンを訪問したトーマス・バッハIOC会長が次のように発言して話題を呼んでいた。

 「メッシが(五輪に)出場できるのであれば最高です。五輪は(キリアン)ムバッペのような多くのスター選手たちが熱望する大会。メッシにとっては再び歴史を塗り替えるチャンスにもなります。五輪で二冠を達成してW杯でも優勝した唯一の選手になれるのかもしれないのですから」

 2月末現在、メッシ自身は五輪出場の可能性について言及していないが、アルゼンチン国内では期待する人が少なくなく、著名ジャーナリスト、フアン・パブロ・バルスキに至っては自身が出演する全てのメディアで「メッシは五輪でアルゼンチン選手団の旗手になるべきだ」と力説している。

 このアイデアには多くの五輪アスリートたちも賛成意見を寄せており、2016年リオ五輪で金メダルを取った女子柔道家で現在はアルゼンチン五輪委員会の役員を担うパウラ・パレートもその1人。「もしメッシが旗手になってくれたら、全てのアスリートにとってとても光栄なこと。彼はいつも世界で私たちを代表してくれているのですから」と語り、五輪に挑む選手たちにとってメッシの存在が大きなモチベーションとなることを指摘している。

 また、セーリングの選手として過去6回の五輪に出場し、癌を克服して54歳で参加した2016年リオ五輪で自身初となる金メダルを勝ち取ったアルゼンチンスポーツ界の重鎮サンティアゴ・ランヘも「メッシは適任者」と賛成。その理由について「旗手になるにはアスリートとして、そして人として誠実でなければいけませんが、レオ(メッシ)はまさにそうだと思います。彼は機種に必要な価値観や素質を持っていると思いますし、何よりも(北京五輪で金メダルを取った)メダリストですから」と話している。

 五輪がコパ・アメリカの直後に行われることや、所属するインテル・マイアミが五輪と並行して開催されるリーグスカップに参戦することなどから、メッシがマスチェラーノ監督のチームの一員としてパリに行くことは現実味に欠けるものの、これが実現するかどうかはメッシ次第。かつて北京五輪に行くと決めた時のように、メッシ自身が決断を下せば誰にも引き止める権利はない。旗手役は、アルゼンチンスポーツ界がメッシに捧げる最高のオマージュ。国旗を掲げて選手団の先頭に立つメッシの勇姿は、さぞ神々しい輝きを放つことだろう。(藤坂ガルシア千鶴=ブエノスアイレス通信員)

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