×

長島最速逆転銀!「自分に感動した」

[ 2010年2月17日 06:00 ]

バンクーバー五輪・Sスケート男子500Mで銀メダルを獲得し、日の丸を背負ってVサインの長島圭一郎

 バンクーバー五輪スピードスケート男子500メートルで、長島圭一郎(27=日本電産サンキョー)が1回目35秒108の6位から、2回目34秒876の好タイムで逆転。合計1分9秒98で銀メダルを獲得した。加藤条治(25=同)も銅メダルを獲得し、そろって今大会の日本勢で初のメダリストとなった。日本は前回のトリノ五輪で、6大会連続で上っていた同種目の表彰台を逃したが、92年アルベールビル五輪以来となる2つのメダルを獲得。日本のお家芸が華々しく復活を遂げた。

 興奮で抑えがきかなかった。2回目を滑り終えた長島は右拳を力いっぱいに突き上げた。電光掲示板の暫定表示は「1位」。そのままコース脇の高村コーチとハイタッチを交わすと勢い余って転倒。この時点でメダルが確定したわけではなかったが、仰向けになって何度もガッツポーズをした。「金が欲しかったけど(メダルが)獲れたのでうれしい。今までで一番いいレース、一番熱いレースができた。自分に感動した」

 生涯最高のレースが大逆転の銀メダルを呼び込んだ。1回目はスタート直後にバランスを崩して35秒108で6位と出遅れ、メダル圏まで0秒17差。「攻めるしかない」。開き直った2回目は得意のアウトスタートから第1カーブ、バックストレートへと加速、小さい第2カーブにも減速することなく突進。コーナー出口で膨らんだものの、レーンを仕切るポイントを蹴飛ばしながら最後まで全力で駆け抜けた。土壇場で2回目トップの34秒876。合計タイムで韓国の伏兵、モ・テボンに抜かれたが「信じられなかった。よく(1回目の)6位から頑張った」と自画自賛した。

 「同じチームでやってきて…。でも、負けたくない気持ちはあった」

 長島を支えていたのは、銅メダルを獲得した加藤へのライバル心だった。日大を卒業し日本電産サンキョーに入社した05年、長島は2つ年下の加藤の練習パートナーという位置づけでしかなかった。1年目に出場したトリノ五輪では、加藤の6位に対し13位の惨敗。「すべてにおいて力不足。恥ずかしかった」と悔し涙を流した。あまりのふがいなさで自分に嫌気が差し、五輪後は北海道の実家に戻ると、チームの練習が始まってもしばらく合流しなかった。

 「金メダルを獲るしかない」。不屈の闘志で飛躍を誓い、夏場は陸上トレーニングで徹底的に体を痛めつけた。08年夏はチームの米国遠征に参加せず、ショートトラックの日本代表合宿に参加。1日8時間の猛練習で、自らの武器である低い姿勢のフォームに磨きをかけた。昨季は世界スプリント総合2位。「トリノで強くさせてもらった」。努力で加藤を抑え、日本のエースになった。

 年下の“先輩”加藤を0秒03差で破っての銀メダル。「日本で1番になれてよかった」。10代の頃から注目されてきた「天才」加藤とは対照的に、社会人になってはい上がった「雑草」。それでも長島は言った。「遅咲きとか言われるがそうは思わない。わざといろんな経験を積んできた」。努力の虫だからこそ味わえる快感は、また格別だった。

 ◆長島 圭一郎(ながしま・けいいちろう)1982年(昭57)4月20日、北海道中川郡池田町生まれの27歳。池田高―日大卒。日本電産サンキョー所属。3歳で競技を始め、中学では野球部にも所属。今季のW杯500メートルは11月のヘーレンフェイン大会で優勝。W杯通算8勝。世界スプリント選手権は昨季総合2位、今季総合3位。1メートル74、70キロ。

続きを表示

2010年2月17日のニュース