矢野燿大氏が分析 岡田阪神の踏ん張りどころ 「ゲーム差は保険にならない」 大事なのは何か

[ 2023年6月22日 07:01 ]

本紙評論家・矢野燿大氏
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 交流戦前は6あった2位・DeNAとのゲーム差は、交流戦を経て2・5に。この現状をどう捉え、今後どう戦うべきか。前阪神監督で本紙評論家の矢野燿大氏(54)が分析した。

 現状を悲観する必要性はない。交流戦は7勝10敗1分けという成績に終わった。敗戦の中で課題も浮き彫りになった。だが、開幕からここまでの戦いをトータルで振り返ってほしい。38勝24敗2分けで、貯金14を数えている。順調なスタートだと言っていい。

 どんなチームでも、シーズンを通して調子がいいということはない。好不調の波は必ずある。5月を19勝5敗と、いい形で戦った反動が交流戦で出たという見方もあるが、そうは思わない。交流戦のチームは打率・210など、部門の数字は上がらなかったところもあるが、大きく負け越してはいない。自信を強く持って、23日からのセ・リーグとの対戦に臨んでほしい。

 リーグ戦はDeNA、中日、そして巨人との対戦で再開する。この9試合が最初のポイントだ。特にリーグ2位と3位のDeNAと巨人は目先のライバル。5勝4敗でも4勝5敗でもいい。大きく負け越すことがないように、スタートを切ることが大事だと思う。

 阪神の強みは先発陣を中心とした守り。そして1番・近本、2番・中野の高い出塁率と機動力を生かした得点力だ。これからの戦いが重要。そして勝負どころは今年も終盤だ。リーグ首位を走る阪神に対して、相手球団のマークも厳しくなる。だが、チームとしての地力を信じ、相手の動きに左右されることなく、阪神の強みを生かした戦いを貫くことが必要だ。

 ゲーム差に一喜一憂することなく、勝ち星を一つずつ積み重ねる。最後に笑うためにはそれしかない。ゲーム差というのは、どんなにあっても保険にはならない。岡田監督とともに戦った08年もそうだった。7月9日の時点で最大13ゲーム差をつけていたが、最後の最後で巨人にひっくり返された。阪神としては大きく失速はしていなかった。巨人の追い上げが想像以上だった。選手としても「おいおい」と思っている間に迫られ、そこからいいことを想像することは難しくなった。

 このV逸の責任を取った岡田監督も、終盤の怖さを十分に知っている。23日からの試合にも手綱を引き締め、終盤までをトータルでにらんだ戦いをするはずだ。今の選手にとっては21年のシーズンの教訓がある。最大7ゲーム差をつけながら、最後はヤクルトに首位を奪われた。あの悔しさを今度こそ晴らすために、目の前の一試合一試合に取り組んでほしい。目標はゲーム差ではなく80勝。あと42勝をいかに積み重ねるかだ。

 ここまで村上、大竹が引っ張った先発陣では、青柳がどういう形で戦列に加わるかに注目している。調子がいいときは追い込むまでに内野ゴロが取れる投手だが、今季はツーシームの変化が早く、ボールゾーンに外れる傾向があった。ボール1個分の変化だけで打ち取れる。原点のツーシームの精度を取り戻してほしい。交流戦で苦しんだブルペンも、数はそろっている。不安がらずにマウンドに向かってほしい。降格した浜地の奮起にも期待している。

 1、2番の出塁を得点に変えるためにも佐藤輝には打点にこだわってもらいたい。本塁打を期待されているが、勝つためにはやはり打点。ここまでも打点38はリーグ5位。よくやっている。安定感が課題だが、後半戦こそ自分のバットで勝負を決める存在になれるように、打席に集中してもらいたい。 (本紙評論家)

 ▽08年の阪神 開幕5連勝から首位を快走し、7月9日の時点で2位・中日と3位・巨人に13ゲーム差をつけた。しかし、8月に北京五輪出場のため藤川、矢野、新井が戦列を離れると失速。9月には巨人の12連勝で差を縮められた。10月8日に巨人との直接対決で敗れて初めて2位に転落すると、2日後の10日にV逸が決定。この年限りで岡田監督が退任した。

 ▽21年の阪神 矢野監督の就任3年目。交流戦終了時は39勝19敗2分けで貯金20の首位に立ち、同率2位のヤクルトと巨人に7ゲーム差をつけた。9月中旬からヤクルトの猛追を受け、10月8日の直接対決で敗れてマジック点灯を許すと、勝てば優勝の可能性が残った10月26日のシーズン最終戦に敗れてV逸。ヤクルトと勝率5厘差の2位に終わった。

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