担当記者がキャンプ中に何度も見たカブス今永のシャドーピッチング「多くの体験談が僕の財産」

[ 2024年5月4日 08:00 ]

カブス・今永
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 開幕5連勝、防御率0・78。100マイル(約161キロ)の速球が当たり前となったメジャーの舞台でカブス・今永の今季最速は94.5マイル(約152キロ)、平均球速も92.1マイル(約148キロ)しかない。

 それなのに奪三振率は9.1にも及ぶ。日本からやってきた公表1メートル78の小兵が大男たちをなぎ倒す投球はまさに痛快。“ときの人”を招くMLBネットワークの番組にも2日(日本時間3日)、出演を果たした。

 全投球の58・3%が示す通り今永の投球は決して速くない直球が生命線だ。その中で5勝目を挙げた1日のメッツ戦は初の中4日。「体もちょっと疲れているな、大丈夫かなって」と語ったように最速は93・4マイル(約150キロ)、平均も今季最低の91.2(約147キロ)と大きく下回った。

 しかし結果は今季最長の7回を87球でまとめ、被安打は3、奪三振9、無失点。中4日に苦しみながらも無双ぶりを発揮したところに彼のハイレベルな投球が表れている。

 固く傾斜のきついマウンドへの対応は日本人投手にとって厄介だ。過去に海を渡った先人たちは「日本では体の前リリースすることを子供の頃から叩き込まれてきた。その投げ方をメジャーのマウンドですると球はとんでもない高めに大きく吹け上がる」と語っていた。

 そしていつしか「リリースポイントは前まで引っ張ってきて投げるのではなく、踏み込んだ足が着地すると同時に耳のあたりで離すイメージに変わる」。アジャストには時間がかかると聞いてきた。

 4月中旬のサンディエゴ。今永から聞いた。

「僕が今できているのは日本から渡ってきた先輩たちのおかげです。多くの体験談を聞かせていただいた。それが僕の財産になっています」

 春季キャンプ。ブルペンに足を運ぶ今永の姿を多く目にした。歩幅、リリースするタイミング、グラブサイドの使い方等、先人たちから受けたアドバイスを体得するためにシャドーを繰り返していた。

 そして登板3戦目となった3月14日のアスレチックス戦。4回1/3を3安打、9三振、無失点とすると「体重移動とかグローブの使い方とか右足の着地だとかうまくハマり出してきた。」。マウンドへのアジャストをこの時点でで終えた。

 1日、自慢のストレートは「弱い球が相手のストロングポイントにいかないように」と語るほど思うままにはならなかった。だが、技術的に迷いがない今永はマウンドしっかりと相手打者が見えていた。

「うまく相手の狙いを外せたことが良かった」。

 球の勢いだけに頼らない。それが今永の投球。今後も彼は安定した投球を続けると確信した。(記者コラム・笹田 幸嗣通信員)

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