【内田雅也の追球】15年ぶり「さすが」の感覚 岡田監督見抜いた「誰も気づかない」芝の刈り込み

[ 2023年2月2日 08:00 ]

芝生の状態をチェックする岡田監督(撮影・大森 寛明)
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 内外野を分ける土と芝生の境目をグラスライン(芝生線)と呼ぶ。公認野球規則では野球場の規格が示され、投手板の中心から半径95フィート(約29メートル)となっているが、あくまで目安でしかない。

 甲子園球場は30メートルだったのを2016年1月に1メートル幅で芝を刈り込み、31メートルにした。コーチだった平田勝男の提案を受けて土の部分を広くした。当時、当欄で書いたので覚えている。さらに2018年のオールスター期間中に2メートル刈り、半径33メートルまで広げていたそうだ。気づかなかった。阪神園芸の甲子園施設部長・金沢健児によると「スタンドから見ていただけでは分かりません」。

 特に強打者に対し敷くシフトが極端になっていき、芝の上で守る内野手も出てきた。そんな時代に対応したのだという。

 甲子園球場に合わせ、キャンプ地の沖縄・宜野座村野球場も同じように芝を刈り込んでいた。

 さて、阪神のキャンプ初日。監督・岡田彰布は2008年2月以来、15年ぶりに宜野座村野球場に足を踏み入れた。朝のウオーミングアップの際、ベンチから選手たちが動く外野まで歩いた。ヘッドコーチの平田を見つけ、発した第一声が「内野、深いな」である。

 驚いた。金沢が「誰も気づかない」と話していた芝の刈り込みを一発で言い当てたのだ。金沢も聞かれたそうだ。「岡田監督はグラウンドレベルに下りて、ベースとの距離感などですぐ気づいたのでしょう。あの感覚はさすがだと思いました」

 平田も「内野手の感覚と言うかね。あの辺は鋭いよね。岡田監督一流の勘なんよ」と話した。岡田は現役二塁手のころ、二遊間寄りのゴロに芝に足をとられて負傷した経験がある。阪神園芸に要望して甲子園の芝を深く刈り込んでいた時期があった。広い内野は「けが防止にもつながる」(平田)と岡田も歓迎するところだろう。

 岡田はまた、手にしたノックバットで土、芝、さらに外野フェンスを突いていた。硬さを確認していたのだろう。まず、球場の状態を確かめる。負傷予防の意味もあるだろう。万全の状態で練習に臨もうと、指揮官として気を配っていたのだ。

 岡田は初日を普通に過ごした。番頭役の平田も「気負いなんてもうないね」と言った。「自然体と言うのかな。普通にやる。それが一番だよ」。ただ、「さすが」の感覚は鈍っていなかった。=敬称略=(編集委員)

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2023年2月2日のニュース