【復刻版】大島康徳氏の夢中論(下) ブログ執筆の理由 小林麻央さんに感動し、闘病中に目標とした人物

[ 2021年7月5日 18:29 ]

笑顔でインタビューに答える奈保美夫人とがん闘病中のプロ野球解説者・大島康徳氏(2018年4月撮影)
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 中日、日本ハムでプレーし、日本ハム監督も務めた野球解説者の大島康徳(おおしま・やすのり)さんが6月30日、大腸がんのため死去した。70歳。大分県中津市出身。

 大島さんは2018年にスポニチ本紙のインタビューに対し、余命1年と宣告されていたことを告白。「人生はどれだけ生きたかではなく、どう生きたかが大切」と死生観を語り、どこまでも野球と家族への愛を貫く姿が印象的だった。大島さんを偲び、同年5月8日付のインタビュー記事「夢中論」を上下2本に再掲します。

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 がんで闘病中のプロ野球解説者、大島康徳氏(67)が自身の人生観を語った初の著書「がんでも人生フルスイング」(双葉社)を上梓(じょうし)した。取材に応じた大島氏は、2016年10月に「余命1年」と宣告されたことを初めて告白。人生の最期を覚悟した中「今仕事に夢中だ」という。「人生はどれだけ生きたかではなく、どう生きたかが大切」。その思いを自宅近くのファミレスで聞いた。

 ブログも生きる励みになっている。がんと生きる過程を「ズバリ!大島くん」で公開中。がん闘病記をつづった小林麻央さんのブログに感動し、17年2月に立ち上げた。麻央さんと面識はなかったが、お互いのブログで励まし合ったこともある。今年1月に他界した星野仙一氏、先月急逝した衣笠祥雄氏も、がんと闘いながら最後まで自身の務めに全力だった。特に同じ評論家として、他界する4日前までテレビで解説していた衣笠氏について「サチさんは最後の最後まで仕事人でしたね」。目標ができた。

 「ドリーム・ベースボール」というイベントに毎年参加している。プロ野球の有名OBたちが中学生までを指導する、大島氏にとってのライフワークだ。ユニホームに袖を通す貴重な機会でもある。「着ると体が昔を思い出してパワーがもらえる。魔力だね」。野球界から今なお求められているという事実が、生きる自信になっている。

 宣告された余命から半年以上過ぎた。抗がん剤の副作用で指先や唇がピリピリすることがある。血液検査の数値に一喜一憂することもある。だが体調は良いし、食べたいものを食べている。タバコも吸えば酒も飲む。家族や愛犬の祭(まつり)に見送られ、大好きな球場へ仕事に行く。ひと言で言えば「それが幸せ」なのだ。

 妻に支えられている。落ち込んでいる時、笑い飛ばしてくれる明るさは宝物だ。「感謝していますよ。36歳で結婚して飲みに行くのもやめた。結婚が転機になった」。それを聞いた奈保美さんが「愛情表現になっていませんよ、結婚がただの転機だなんて」といたずらっぽく笑うと「男の感謝にはいろいろなものが詰まっているんだよ」と照れた。互いに笑顔なのは夫婦円満の証。大島氏の「感謝」は人生2度目のプロポーズに聞こえた。

 ◇大島 康徳(おおしま・やすのり)1950年(昭25)10月16日生まれ、大分県中津市出身。中学まではバレーボールをやっていたが、中津工で野球を始めて68年ドラフト3位で中日入団。直後に投手から打者に転向。83年に本塁打王を獲得するなど主軸として活躍。87年日本ハム移籍を経て94年に引退。通算2204安打、382本塁打。00~02年日本ハム監督、06年第1回WBC日本代表打撃コーチ。

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