広島連覇の裏側 FA補強、トレードなくても“三本の矢”機能

[ 2017年9月19日 05:30 ]

セ・リーグ   広島3―2阪神 ( 2017年9月18日    甲子園 )

<神・広>2年連続8度目のリーグ優勝を決め、胴上げされる緒方監督
Photo By スポニチ

 FA補強もなければ、大型トレードもなかった。人材発掘(スカウト)、育成(2軍)、管理(トレーナー)の“三本の矢”が機能した連覇の裏側を探った。

 ≪スカウト支えるオーナー式年代別表≫

 過去2年間で計4勝だった薮田が14勝へ飛躍し、数字上は黒田の抜けた穴を埋めた。岡山理大付では甲子園に縁がなく亜大でも右肘故障などで公式戦登板は3年時の2試合だけ。松田元(はじめ)オーナーは「ビデオを見たら力むし、フォームはバラバラ。ただ、150キロをバンバン投げるポテンシャルはあった」と14年ドラフト当時を振り返る。広島出身ながら周囲を驚かせた2位指名はスカウト陣の眼力を証明する好例だ。

 外部からの補強に頼らない分、新人の発掘は生命線。会議では各ポジションを無駄なく更新させるため、オーナー考案の年代別選手表をフル活用する。各スカウトに車を貸与しているのも特徴的だ。

 「よくやってくれとると思う」と松田オーナー。欠かせない戦力になった2年目の西川は15年の5位指名。新陳代謝がチーム力を高める。昨秋4位で入団した高卒捕手の坂倉は2軍でリーグ2位の打率・298。黄金期を担う“新世代”も控えている。

 ≪育成と再生―選手の“旬”見極める目≫

 復活した今村と中田がブルペンを支えた。2人とも2軍暮らしに甘んじた2年間があった。今村は14、15年、中田は15、16年。新戦力の育成だけでなく不振からの再生も2軍の重大な任務だ。「だから、彼らがずっと頑張ってくれていることは、凄くうれしいんよ」。水本2軍監督はしみじみと喜んだ。

 野手ではバティスタだ。ドミニカ共和国カープアカデミー出身で昨季は育成選手として2軍で経験を積んだ。6月2日に支配下登録されると、史上初のデビュー戦から2日連続代打アーチ。ここまで10本塁打を放ち、勝利打点は6度を数えた。

 期間限定でも旬を見極めれば戦力になる。水本2軍監督は「2軍は1軍のための組織。この部分の戦力が足りなくなったら、こうしようという認識は(緒方監督と)一致していると思う」と言った。

 ≪故障確率下げる首脳陣との密な連携≫

 5月5日、阪神戦。スタメンに菊池の名前がなかった。松原慶直チーフトレーナーは「コンディションを整える箇所が出たので時間をもらった」と説明。故障確率を下げることに心を砕いた今季を象徴していた。

 鈴木の突発的な故障以外は野手で長期離脱を出さなかった。松原チーフトレーナーは緒方監督から「チームに波風を起こすのはケガだから」と伝えられ、変化を感じた。「全体をより注意深く見てくれるようになった」。コーチも巻き込んで選手の体調を管理し、背中を押す側と止める側が意見を交わして総合判断。時には緒方監督が起用に慎重で、トレーナーが先発を進言することもあった。

 あの阪神3連戦。菊池は全て欠場し、3連敗した。目先の勝利にとらわれない判断が正しかったことは連覇という成果が物語る。

続きを表示

2017年9月19日のニュース