仙台育英 白球&気まぐれ女神の心をわしづかみ

[ 2010年8月12日 06:00 ]

<開星・仙台育英>9回裏2死一、二塁、糸原の飛球を好捕した左翼手・三瓶(左)と抱き合って喜ぶ仙台育英2番手の田中

 【仙台育英6―5開星】歓声も悲鳴も聞こえなかった。仙台育英は1点リードした9回2死一、二塁、開星・糸原の打球は左中間へ。「正直終わりかと思った」。佐々木監督もサヨナラ負けを覚悟した。その瞬間、ダイビングキャッチを試みた左翼・三瓶のグラブにすっぽりと白球が収まった。勝った。

 「自分でも何が起きたのか分からなかったです。捕った瞬間は、うわっ、捕っちゃった。勝ったんだ!と思いました」。顔やひじに芝生をつけたまま、ヒーローはお立ち台で胸を張った。
 背番号は3。この日は一塁で先発し、8回から左翼へ。手にしていたのは控え部員からの借り物グラブだった。4月から外野の練習を始めたばかり。毎日1時間の居残り練習でノックを受け、感覚を体に叩き込んだ。最後の場面は左中間寄りに約5メートルほど守備位置を変えていた。「(左打者の糸原は)データ的にも逆方向に強い打球を打つとあった」。チームを救った超美技の裏には冷静な読みが隠されていた。
 奇跡はそれだけではなかった。2点を追う9回は2死無走者から1点を返し、なお一、二塁。三瓶は左前打を放ったが、二塁走者の庄子が三塁を回ったところで転倒し、同点ならず。次打者の日野の打球は中堅へ上がった。ところが強い風に戻された飛球を中堅手・本田が落球し、2者が生還して逆転した。その裏のスーパーキャッチ。アウトあと1つのドラマは仙台育英にほほ笑んだ。
 「みんなやることをやってきた。やることをやっていれば、何かが起こる」。三瓶のダイビングキャッチは白球とともに気まぐれな女神の心もわしづかみにした。

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2010年8月12日のニュース