拝啓、旧態依然の指導法でやってる皆さん 侍・栗山監督の「手法」から学ぶことは一杯あるで

[ 2023年4月2日 18:00 ]

鳥内秀晃氏
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 【名将・鳥内秀晃の人間話 頼むでホンマ】3月のスポーツ界は、野球のWBC一色やったな。選手が頑張ったんはもちろんやけど、栗山英樹監督の手腕、チームマネージメントなくして、世界一の偉業はなかったと思うで。

 大会を通して感じたのは、全選手が「フォア・ザ・チーム」に徹していた、ということやな。こういうオールスターのチームで短期決戦を戦う場合、実力があっても「オレはオレ」という自己中心的な選手は和を乱してまうねん。それから野球と真剣に向き合う姿勢も、メンバーに共通しとったな。大谷選手とかダルビッシュ選手は、その代表格やろ。監督はおそらく選考するにあたって、全員と話をしたはずやで。野球人口が減少する中で、絶対に優勝して日本球界を救いたい、という強い思いを伝えたうえで、勝つためには何ができるか、選手の意見もしっかり聞いたはずやわ。せやなかったら、あんな形で最後までチームが一つにまとまらへんで。

 あと、本番に向けたシミュレーションも見事やったな。アメリカは確かに強いけど、別に10回戦って10回勝つ必要はないやん。10回やって1回だけ勝つ試合が本番やったらええわけやろ。決勝から逆算して、短期決戦で勝つためにええ投手をたくさん選んで、自分が立てた戦略を最後まで貫いたのは、ホンマにすごいわ。

 前から言うてるように、スポーツって本来おもろいもんやろ。誰かにやらされるもんやなくて、自分で考えてやってみて、成果が出たら、またその先を考えるわけやん。壁にぶつかった時はコーチに聞けばええんやし。この当たり前のことが当たり前でなかったのが、世間で言われているような体育会式やわ。今回、栗山監督は、旧態依然とした、いろんなスポーツの古い指導法が、もう役に立たへんことを教えてくれたんちゃうかな。未だに選手の個性を尊重せんとか、自分のやり方を強要するような指導者は、しっかり学んでほしいな。

 プレーヤーが一番力を発揮できるのって、「やってて楽しい」って感じられる環境やねん。ただ、一流アスリートの言う「楽しむ」って、「enjoy」とはちゃうで。例えばWBCの決勝戦なんて、誰かて緊張するやん。ワクワク、ドキドキ、ハラハラするような場面で、自分がどんだけの力を発揮できるんかを体験したいねん。それが「楽しむ」ということや。

 一流になればなるほど、極限状態で戦うための準備はしてるわ。ものすごい重圧の中で、どれだけ自分のパフォーマンスが出せるかを試すのが楽しいねん。「enjoy」やのうて、「enrichment」。やるだけやって、負けたらしゃあないやん。それだけのことやで。だいたい負ける時って、プレッシャーにつぶされて、普段通りにできひん時がほとんどや。準備も何もせんと試合に負けて、「楽しめた」は、ありえへんで。

 WBCに出ていた選手は、間近で大谷選手やダルビッシュ選手みたいな本物のプロの姿勢を見て、とても勉強になったやろな。同じように、昔のやり方で教えている、いろんなスポーツの指導者も、栗山監督の手法を見てるだけではあかんで。指導者は常に選手と「どんな選手になりたいねん」とか「どうやったらなれるねん」と話をしとかな、どんなこと考えているかも分からへんやろ。せっかく侍ジャパンがすごいことやったんやから、日本のスポーツ界も「財産」を共有していかな。頼むで、ホンマ。(関西学院大アメリカンフットボール部前監督)

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2023年4月2日のニュース