ショートトラック菊池純礼 “やり切った”北京五輪 「未定」という進退の行く先も見守りたい

[ 2022年3月2日 07:00 ]

女子ショートトラック1500メートルで8位入賞した菊池純礼(AP)
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 北京五輪で選手はもう一つの“敵”と闘っていた。それは大会中、徹底された新型コロナウイルスの検査だ。陽性になって突然、五輪に出場できないかもしれないという不安は大きなストレスだったはずだ。実際、フィギュアスケート男子のビンセント・ジョウ(米国)は陽性反応が出たことで、個人戦に出られなかった。

 そんな中で聞いた言葉が「たとえ大会中にケガをしても、陽性になってしまっても…」だった。日々に全力を注ぎ、そう完全燃焼を誓っていたのがショートトラック女子の菊池純礼(26=富士急)。自身2度目となった大舞台は心身ともに充実した状態で臨み「今、一番スケートを楽しめている」とも語っていた。

 500メートル、1000メートル、1500メートルと、いずれも転倒により勝ち進めなかった。だが、迎えた1500メートルの順位決定戦では、序盤から大逃げという戦略に打って出る。虚をつかれた他選手を周回遅れとし、そのリードを保ったまま先頭でゴールを駆け抜け8位入賞を果たした。

 「周りが五輪やW杯でメダルを獲る選手ばかりで、何かしないと入賞には手が届かない。何もせずに終わるより、何かして“やり切った”と思いたかった。自分が一番、五輪を楽しんでやろうと思っていました」

 メダルという目標には届かなくても、レース後の取材エリアで見せた表情は晴れやかだった。ショートトラック界では有名な菊池5姉妹の末っ子。五輪前に母・初恵さん(59)に話を聞くと「生まれた時にはもう、お姉ちゃんがスケートを始めていた。純礼は背中におんぶしてリンクに連れて行っていた」という。4人の姉を追うようにしてスケートを始め、今では日本女子のエースと呼ばれるまでになった。

 大会後、ともに2大会連続で出場した三女の悠希(31)は引退を表明した。純礼は進退を「未定」とし、率直な思いを口にした。

 「今が一区切りと思っています。北京で出し切ろうと思いながら、この1年間やってきた。もう少し何かあれば上のレベルに手が届くんじゃないか。(一方で)例えば五輪後にコーチになるというのも、この2年間ぐらいは考えてきた。いろんな方に相談しながら自分の道を決めたい」

 力を尽くせたからこそ、まだ未来は想像できない。かつてはスピードスケートとの二刀流でも注目を集めた菊池純の行く先を見守りたい。(五輪担当・西海 康平)

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2022年3月2日のニュース