ワリエワ、疑惑残したまま出場「OK」CASはドーピング違反問題“棚上げ”で裁定

[ 2022年2月15日 05:30 ]

北京冬季五輪 ( 2022年2月14日 )

練習するワリエワ(撮影・小海途 良幹)
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 昨年12月のドーピング違反が判明したフィギュアスケート女子のカミラ・ワリエワ(15、ロシア・オリンピック委員会=ROC)の五輪個人戦出場が認められた。スポーツ仲裁裁判所(CAS)が14日、暫定資格停止処分の解除を不服とする国際オリンピック委員会(IOC)などからの提訴を却下した。要保護者である16歳未満など「例外的な状況」が考慮された金メダル最有力候補は、15日の女子SPに26番滑走で出場する。

 裁定発表から約30分後、ワリエワはサブリンクの公式練習に姿を現した。殺到した各国メディアが見守る中で40分間の調整を終えると、本番リンクで迎えた2度目の練習でもサルコーやトーループの4回転ジャンプを連発。ライバルたちに勝利を諦めさせる「絶望」が愛称の15歳は、いずれの練習後も取材エリアは無言で通り過ぎた。

 CASは13日夜、オンライン形式の聴聞会を約5時間半も開催。ワリエワ本人、暫定資格停止処分を解除したロシア反ドーピング機関(RUSADA)、提訴したIOC、世界反ドーピング機関(WADA)、国際スケート連盟(ISU)を事情聴取し、以下の「例外的な状況」で処分解除は妥当と裁定した。

 (1)WADA規定で16歳未満は処分軽減など柔軟に対応する「要保護者」で暫定資格停止に関する記述はなし

 (2)北京五輪期間中は陽性判定なしで、昨年12月の陽性反応は手続き継続中。この状況で五輪出場を認めなければ彼女に取り返しがつかない損害を与える

 (3)選手側には非がない検体の提出遅れにより、自己弁護の手続きができなかった

 裁定は五輪出場の可否のみで、昨年12月のドーピング違反を否定したわけではない。ワリエワがROCの金メダルに貢献した団体戦の取り扱いも別の手続きとなり、IOCは今大会中にメダル授与式は行わないと発表。失格になった場合は3位の日本が銀メダルに繰り上がる可能性がある。今後の処分も考慮し、個人戦でワリエワがメダルの対象となった場合も表彰式は実施せず、SPでフリー進出可能な24位以内に入れば、25位の選手もフリーに進めるとした。

 疑惑の霧が晴れないまま迎える女子SP。「絶望」の演技は何を世界に訴えるのか。

 ◆カミラ・ワリエワ 2006年4月26日生まれ、ロシア・カザン出身の15歳。09年にスケートを始め、18年シーズンからトゥトベリゼ・コーチに師事。19~20年シーズンにジュニア・グランプリファイナルと世界ジュニア選手権を制覇。21年からシニアに参戦し、スケートカナダやロシア杯、欧州選手権で優勝。SPの90.45点、フリーの185.29点、合計272.71点はいずれも歴代世界最高記録。1メートル60。

 【ワリエワのこれまで】
 ▼21年12月25日 ロシア選手権女子シングルで優勝。

 ▼22年2月1日 北京入り。

 ▼同7日 団体で五輪の女子競技史上初めて4回転ジャンプを着氷。

 ▼8日 ロシア選手権の検査結果をWADAが報告。禁止薬物のトリメタジジンに陽性反応を示し、RUSADAはワリエワを暫定資格停止処分に。団体戦表彰式は「法的問題」で延期。

 ▼9日 RUSADAの規律委員会に異議申し立て。暫定資格停止処分が解除される。各国メディアがドーピング違反を報じる。

 ▼10日 個人戦へ練習再開。

 ▼11日 ドーピング検査を管轄する国際検査機関(ITA)が大会前のドーピング違反を公表。IOCなどが暫定資格停止処分解除への異議をCASへ申し立て。

 ▼13日 CASがオンライン形式で聴聞会。

 ▼14日 CASが個人戦出場を認める。

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