金に0秒6差の銅メダル 渡部暁斗「残っていなかった」も「金メダルまですごく近いところまで来られた」

[ 2022年2月15日 20:41 ]

北京五輪第12日・ノルディックスキー複合男子個人ラージヒル ( 2022年2月15日    国家ジャンプセンターほか )

<北京五輪ノルディック複合個人ラージヒル>銅メダルを獲得した渡部暁斗(右)。中央は金メダルのグローバク、左は銀メダルのオフテブロ(ロイター)

 北京五輪ノルディックスキー複合男子個人ラージヒルが15日行われ、5大会連続出場の渡部暁斗(33=北野建設)が銅メダルを獲得した。

 わずかに届かなかった。金メダルのグローバク(ノルウェー)までわずか0・6秒及ばなかった。最終直線のデットヒート。渡部暁斗は「正直、何であそこでもうちょっと頑張れなかったのかと思い返せば、最後の数百メートルをもうちょっと頑張れば良かったのにと思うのですが、走っている最中は精一杯だった。最後は(力が)残っていなかった」とし、金メダルまでの0・6秒の差は「力不足ですかね」とした。ただ、その表情は柔らかかった。

 5度目の五輪挑戦。個人ノーマルヒルで五輪過去2大会連続銀メダルを獲得していた渡部暁だったが、9日の同種目では無念の7位。18年平昌五輪5位が最高成績の個人ラージヒルで“リベンジ”を期すことになった。前半飛躍(ヒルサイズ=HS140メートル)で135メートルを飛び、126・4点をマーク。トップとは54秒差の5位で後半距離(10キロ)へ臨んだ。2・5キロの4周の周回で行うコース。1周目の終わりに首位のリーベル(ノルウェー)がコースを間違えるアクシデントもあり、渡部は3・5キロでトップに立った。実は個人ノーマルヒルでは、標高が高く、タフなコースの距離で4位タイのタイムで粘り強さを見せ「いい走りができた」と手応えをつかんでいた。先頭集団を引っ張った上で、ラスト1周、集団から早めにスパートをかけ、最後はノルウェー2選手との直線勝負に持ち込んだ。「もうちょっと(集団で)協力というか、引っ張り合うような展開になってくれれば、自分も楽できたんですけど、人もいなかったので、積極的に自分で行くしかないと」と積極的に走り、自分でもぎとったメダルだった。

 笑顔で表彰式に臨んだ渡部暁斗は両手を突き上げた。充実感にも浸りながら「正直、金メダルとる獲ると言ってきたものの、(W杯で)表彰台にも上っていなくて、自分を信じ切れていなかった部分があったが、金メダルまですごく近いところまで来られたかな」と話した。4年間の歩みを問われると「正直、キツかったですね。どんどん自分のパフォーマンスが出せなくなることが多くなってきて、メダルすら厳しいかもという気持ちもあって…。ソチとか平昌に向かうときのような自信もなく、今までの中で一番厳しい4年間だったかなと思う」と続けた。

 20年11月には長男が誕生。「1人の人間として人生の中で凄く大きな出来事。自分の人生に生きる意味が生まれた」。来季以降は家族との時間を大切にしながら競技と向き合い、「100%自分のために時間を使って、金メダルを獲りに行くのは最後」と話してきた。渡部暁斗の集大成とも言える北京五輪だった。

 「色は自分が求めていた色ではありませんでしたけど、一つ形が残るものをまた残すことができて良かったと思います」と穏やかに言った。ノルディック複合では日本選手初の3大会連続のメダル獲得。さらにノルディック複合個人ラージヒルでは日本勢初メダルとなった。まさに偉業となった。17日には日本のエースとして、団体に臨む。

 ◆渡部 暁斗(わたべ・あきと) 1988年(昭63)5月26日、長野県白馬村生まれの33歳。3歳からゲレンデスキーを始め、白馬北小4年からジャンプを始める。白馬中から本格的に複合を始め、白馬高、早大を経て、北野建設所属。五輪には白馬高2年時の06年トリノ、10年バンクーバー、14年ソチ、18年平昌から5大会連続出場。1メートル73、61キロ。

 ▽ノルディック複合 飛躍(ジャンプ)と距離(クロスカントリー)を組み合わせた競技。ジャンプの瞬発力やテクニック、距離の持久力や精神力など総合的な身体能力が求められることから、本場欧州では王者には「キング・オブ・スキー」の称号が与えられる。個人戦では前半飛躍で1回のジャンプを行い、その得点差をタイム差に換算(1点差ごとに4秒)。後半距離は飛躍1位の選手が最初にスタートし、後続の選手は換算されたタイム差によって順にスタート。10キロを走り、ゴール到着順がそのまま最終順位となる。

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