サンズが昇格した福岡にアメフトの拠点が生まれた 現役芸人が躍動し、公開プロポーズに沸いた「記念日」

[ 2021年11月22日 05:30 ]

社会人アメフト「X1エリア」リーグ戦   イコールワン福岡55―7電通 ( 2021年11月21日    博多の森陸上競技場 )

<イコールワン福岡SUNS・電通キャタピラーズ>ファンの前で昇格を報告するコージ・トクダ
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 冷たい秋雨が降る博多の森に、熱いカウントダウンが響いた。九州アメフト界では異例の3262人を飲み込んだスタンドが、X1スーパー昇格の時を刻む。関東、関西以外では初となる最上位カテゴリーへの昇格。DL(ディフェンスライン)の一員として先発し、勝利に貢献したコウジ・トクダ(33)が声を弾ませた。

 「しっかりやるべきことをやった結果。本当にうれしいですね」

 かつてブルゾンちえみとのユニットでブレーク。お笑いコンビ「ブリリアン」を解散した後、大阪学芸高、法大で情熱を燃やし、09年には主将として甲子園ボウルにも出場したアメフトへの情熱が現役復帰へ駆り立てた。東京で芸人活動をしながら、週末に練習のため福岡へ移動する多忙な日々。日曜夜に羽田空港へ着き、自宅へ戻る頃には日付が変わることも。ハードな練習をこなした後で腰を痛め、千鳥足で家路につくことを経験しても、競技への熱意だけは持ち続けた。

 来年で34歳のチーム最年長。「X1スーパー」昇格を「置き土産」に現役を去る決断は、悲願達成の瞬間を味わい、やっぱり鈍った。「やっぱりフットボール楽しいっすね。なかなか辞めさせてくれません。一つのゴールは迎えたけど、一番上のリーグでどれだけ通用するかやってみたくなった」。試合終了後に現役続行を宣言。精神的支柱として求めるチームにも異存はない。

 そして、チームカラーの赤で埋め尽くされたスタンドは、思わぬ「サプライズ」にもわき上がった。5TDパスを決め、昇格へ導いたエースQB西山雄斗(26)が試合後の挨拶で、6年間交際してきた彼女に「公開プロポーズ」。3000人を超える「証人」の前で結婚指輪を手渡し、祝福の拍手を浴びた。

 「勝ったら、告白しようと思っていたので、チームとしても、個人としても負けられない試合だった」

 創部5年目に訪れた歓喜の一日。一つの区切りは迎えても、そこで満足する選手が一人もいない。「アメフトという競技をだれも知らないような地方でも、一番上のリーグまで上りつめることができた。この成功体験が日本のアメフトを変えられるかもしれないし、他の地域にも勇気を与えるようなチーム運営をしていきたい」。福岡の代表、監督、キッカーとしてプレーし、西南学院大監督と「4足のワラジ」を履く吉野至氏は視線を前に向けた。関東、関西に続くアメフト界の「第3極」。福岡のあくなき挑戦は、幕を開けたばかりだ。

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