パラ競泳14歳の山田美幸 天国の父に捧げる史上最年少銀メダル「私もカッパになりました」

[ 2021年8月25日 20:05 ]

東京パラリンピック第2日・競泳女子100メートル背泳ぎ(運動機能障がいS2)決勝 ( 2021年8月25日    東京アクアティクスセンター )

<女子背泳ぎ S2>銀メダルを受け取り笑顔の山田  (撮影・光山 貴大)
Photo By スポニチ

 今大会日本選手団最年少代表の14歳、山田美幸(WS新潟)が2分26秒18で銀メダルを獲得。東京パラリンピック第1号&日本史上最年少メダリストになった。

 前半から積極的にレースを展開した山田は、前半を2番手で折り返すと終盤も粘りを見せた。「スタートもターンも自分の中では100点満点。前半で飛ばしてそのまま後半も落ちすぎず維持できた」と納得の表情。最年少メダルはレース後の取材で知ったといい「自分でもビックリしています」と目を丸くしつつ喜んだ。

 生まれつき両腕がなく、両脚も左右で長さが異なる。それでも力強いキックと、頭をわずかに傾けることでまっすぐ泳げるように工夫。肩を使った上半身の激しい動きも推進力を生んでいる。

 水泳との出会いは保育園時代で小児ぜんそく克服と「お風呂でおぼれないように」という理由もあったと山田は笑う。成長するにつれて障がいを自覚し始めたが、バリアフリーの水中では「同じように泳げたので水泳であんまり他の人と違うなと思ったりはしませんでした」と振り返る。

 そんな居心地がいい競技で、山田を前のめりにさせる出来事があった。前回16年リオデジャネイロ・パラリンピック。テレビに見とれた。「一番印象に残っているのは泳ぎ終わった時の歓声とインタビューでみんな笑っていたこと。一生懸命泳ぐ、一生懸命競い合うってこんなに楽しいんだ」。昨年2月の国際大会で従来よりも障がいの程度が重いクラスに変更になり、大幅なタイム短縮もあって世界のトップの仲間入りを果たした。自身でも驚くほどの成長曲線に「ここまで来れるなんて思ってもいませんでした」と笑った。

 喜びを伝えたい人がいる。父・一偉(かずい)さんが2年前に死去。「あと3日で入院して手術というところだったんですけど、がんで倒れて」。幼少期に水泳の話をするといつも「俺も昔はカッパだったんだよ」と柔和に応じてくれた。「天国があるなら見ていてくれているんじゃないかと」。そう信じて泳ぎ、父に捧げる銀メダルに「パパに頑張りました、私もカッパになりましたと伝えたい」と声を震わせた。

 9月2日には50メートル背泳ぎで2つ目のメダル獲得に挑む。目指す色は決まっている。「金を獲れるように頑張りたい」。新エースに名乗りを挙げた新星が、力強く宣言した。

続きを表示

この記事のフォト

2021年8月25日のニュース