【アーティスティックスイミング】柴田亜衣さん 伝統競技であるがゆえ初出場でも重圧
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【メダリストは見た 柴田亜衣さん】アーティスティックスイミング(AS)のデュエットで乾友紀子(30=井村ク)、吉田萌(26=ザ・クラブピア88)組は4位に終わった。日本の2大会連続メダルはならなかった。今回のAS日本代表は乾以外は全員が初出場。04年アテネ五輪女子800メートル自由形金メダリストの柴田亜衣さん(39)が強く感じたのは、伝統種目であるがための初めての五輪の難しさだった。
予選からずっと見ていましたが、印象に残ったのは演技後の2人の表情です。凄く対照的でした。吉田さんは硬い表情で緊張感がヒシヒシと伝わってきました。本当に悔しかったんだろうなと思います。逆にチーム最年長で3度目の五輪の乾さんには笑みもあって、貫禄がありました。自分が引っ張っていかないといけない、周りに不安を与えてはいけない、という心構えができているように感じました。
ASの日本代表は一度メダルが途切れましたが、前回のリオデジャネイロ五輪で再び表彰台に立ちました。偉大な先輩たちが築いた伝統があります。若い選手たちは、表彰台に立つ先輩たちの姿に憧れ、日本代表になってメダルを獲りたいと考えていると思います。先輩たちのように練習を積めば、メダルが獲れると頑張れると思います。
私は現役時代に何度かASの選手たちと同じプールで練習したことがありますが、驚いたのはその練習量の多さでした。私たちが朝練を終えた8時頃からASの選手たちの練習はスタート。夕方の練習のために午後4時頃に戻ってきても、まだ続いていました。水中だけでなく陸上のトレーニングもある。自分が選手だったら、その練習量にはついていけないと感じたことを覚えています。
そんな猛練習を積んで代表選手になると、すぐに世界でメダルを争う立場になります。初出場であろうと、絶対にメダルを獲らなければいけないという重圧がかかる。吉田さんにはメダルに関するプレッシャーや思いが相当あったと思います。
その状況は私が04年アテネ五輪に初出場した時とは大きく異なります。それまでの国際大会で結果を残していなかった私はメダルを目指していませんでした。思い切ってレースに臨むことができ、周りのレベルが低い幸運にも助けられて、勝つことができました。
難しさを感じたのは2度目の五輪となった08年の北京でした。メダルを獲らないといけない。ケガで納得いく練習ができていないのでメダルは難しいと分かっていても、金メダリストとしてちゃんと泳がなければいけない。いつもそんなことばかりを考えていて、苦しい大会でした。吉田さんやASの選手たちは初出場の五輪から、そんなプレッシャーと向き合っているのだと思います。
コロナ禍で1年延期になったことも影響があったかもしれません。コンビを組んで日が浅い2人にとってはじっくり練習できる時間が増えるプラス要素があった半面、五輪前年に国際大会がないことで不安が生じたかもしれません。競泳であれば、他国の選手がそれぞれの国で行われる大会で出したタイムを見て、自分が今どのあたりに位置するのかが分かります。採点競技の場合は同じ土俵で戦わないと、優劣が分からないように思います。自分たちがどこにいるのか分からなければ、明確な目標も持ちづらいでしょう。もしかしたら、気持ちをコントロールするのも難しかったかもしれません。
話は変わりますが、今回競泳の日本代表は3つのメダルを獲得しました。うまく力を発揮できなかった有力選手も何人かいて全体としては好成績とは言えなかったと思います。その中でうれしかったのは女子自由形長距離で久々に小堀倭加さんと難波実夢さんの2人が出場したことです。小堀さんは400メートルで自己ベストも出しました。私の400メートルと同学年の山田沙知子さんの800メートルの日本記録がずっと残っていますが、きっと近い将来更新してくれると思います。2人が頑張っていけば、下もついてくる。いい伝統が生まれればいいなと思います。
ASはこれからチームが始まります。デュエットではメダルに届かなかったとはいえ4位です。自分たちの練習してきたことを信じて挑んでほしいと思います。
◇柴田 亜衣(しばた・あい)1982年(昭57)5月14日生まれ、徳島県出身の39歳。3歳から水泳を始め、鹿屋体大2年時に日本代表初選出。4年時に迎えた04年アテネ五輪800メートル自由形で日本人女子選手では初となる自由形の金メダルを獲得。05、07年世界選手権でも表彰台に上がり、08年北京五輪後に引退。現在は全国各地で水泳教室を開催し、日本スポーツ振興センター「SPORTS JAPAN」アンバサダーを務める。
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