五輪へ ワクチン打っていいのか?専門家 副反応と練習の抑制やむなし

[ 2021年6月3日 05:30 ]

2020+1 DREAMS 五輪開幕あと50日、選手&関係者が抱える不安

米ファイザー製の新型コロナウイルスワクチン
Photo By 共同

 国際オリンピック委員会(IOC)から提供された新型コロナウイルスワクチンの東京五輪日本選手団への接種が1日から始まった。各競技団体を通じて事前に希望調査が行われており、個人の意思が尊重される。アスリートからは不安や葛藤の声が聞こえてくるが、呼吸器・アレルギー内科が専門の昭和大学病院の相良博典院長は「副反応や、1週間ほど練習量をセーブする可能性が出ることを理解した上で接種は推奨されるべき」とした。

 選手団の接種対象者約1600人のうち、選手600人のほとんどは20~30代の若年層となる。相良院長は副反応について「アスリートだから、という問題はない。ただ、局所反応は若年層の方が強く出るといわれている」と説明。免疫反応の強い若年層がファイザー社製のワクチンを接種した場合、80%の人に腫れや痛みなどの反応が出るとされ、倦怠(けんたい)感や頭痛は50%、薬を必要とするような発熱や痛みは25%に表れるというデータもある。副反応に男女差はないが、長ければ1週間ほど症状が続く人もいるという。

 1回目の接種よりも、3週間ほど後に打つ2回目の方が副反応が強く出る可能性が高い。日頃から厳しい練習で追い込むアスリートも、接種による休養を考慮に入れる必要がある。相良院長は「練習量をセーブしないといけないため(パフォーマンスに)影響が出る可能性がある。予想される副反応は知っておかないといけない」とし「気をつけるべきは接種後に体にかかる負荷。一時的に練習を抑えなければいけない」と指摘した。

 陸上女子1万メートル代表の新谷仁美(積水化学)が「恐怖もある。症状がどう出るか分からないので打ちたくない思いもある」と語ったように、極限の状態で鍛錬するアスリートは不安を抱えているケースもある。また、一般接種と別枠の接種が“優遇”と捉えられた葛藤もある。相良院長はワクチンでコロナ発症のリスク減少を前提とし「打ちたくないことは納得できる。打ったから必ず発症しない、とは言えない。中長期的な安全性も現時点では担保されているとは言えない」と理解も示し「(本番2カ月前という)接種時期は、かわいそうだなと思う」と付け加えた。

 ただ、強力なインド株が世界中で猛威を振るい、新たにベトナム株も発見された。東京五輪は、世界中からアスリートが集う祭典。相良院長は「ウイルスは変異していく。変異株がはやることでワクチンの効果も落ちる。ただし、接種した方が変異株を防御でき、重症化を抑制できることから考えると接種した方がいいのではないかと思う」とアドバイスした。

続きを表示

この記事のフォト

2021年6月3日のニュース