【荒磯親方 真眼】照ノ富士の1勝“線”で大きな価値

[ 2021年5月14日 05:30 ]

大相撲夏場所5日目 ( 2021年5月13日    両国国技館 )

若隆景(右)を寄り切りで破る照ノ富士(撮影・郡司 修)
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 迫力満点の勝ちっぷり以上に、小兵力士に対する照ノ富士のクレバーなさばきが浮き彫りになりました。必死に勝機をうかがう若隆景が、はず押しから右を差し込んだ。その瞬間、狙い澄ましたように左から相手の差し手を抱えて小手に振り、体を密着。体格差を生かせる格好の体勢をつくって勝負を決めました。

 中に入り込んでくる相手にもろ差しを許しても、「差すなら差してこい!」と自信満々の構えです。抱え込んでからの攻めを習得しているので、誘い込まれるように差してしまう相手はなすすべがありません。若隆景も体格差があり過ぎて得意のおっつけや、はず押しも効果は半減。現状では攻め手がないといった印象を受けました。

 短時間で勝負が決する競技でも、長いスパンで考えなければならないのが「大相撲」です。「点」ではなく「線」での戦い。上り調子の若武者に苦手意識を植え付けたことは、大関にとって1勝以上の価値があります。(元横綱・稀勢の里)

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2021年5月14日のニュース