陸上女子五輪代表の新谷仁美も進化させた「寄り添う極意」 潜在能力を引き出す指導者と選手の関係とは

[ 2021年4月14日 05:30 ]

横田真人コーチ(C)HideakiIwakuni
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 剣豪・宮本武蔵の兵法書「五輪書」にちなんで、五輪競技の指導者のモットーを月イチで紹介する。第50回は、陸上の東京五輪女子1万メートル代表・新谷仁美を指導するTWOLAPS(ツーラップス)トラッククラブの横田真人代表兼コーチ(33)に「寄り添う極意」を聞いた。

 陸上クラブTWOLAPSの横田コーチは、コンサルタントのような存在だ。選手と指導者の間に師弟関係を求めていない。「一緒に何かを作っていくのが、選手とコーチの作業」。競技の成績アップを主としながら、社会人生活をよりよいものにするための「ライフスキルやビジネススキル」のサポートにも力を注いでいる。

 例えば、昨夏、大会がなくなった中高生向けに、動画投稿による記録会を開催したのだが、現役選手も運営にかかわった。事業計画の作成などは後の人生にプラスになるだけでなく、頭を切り替える時間があった方が競技力が向上する選手もいるそうだ。また、女子選手の体の悩みについて積極発言をする東京五輪1万メートル代表・新谷のアスリート像構築にも一役買っている。

 練習は、9選手の個性に応じたレシピを作り、それぞれの味を作り出している。

 「人を変えようとしても難しい。本質的に持っていることを引き出したい。変えるのではなく、気付かせる」

 新谷が現役復帰した18年当初、メニューづくりにほぼノータッチだった。ただし、トレーニングから栄養面に至るまで、何でも背負い込む独立独歩のランナーの負担を軽くしようと、手を替え品を替え、コミュニケーションをとり続けた。

 転機は19年世界選手権。1万メートル11位敗戦を受けて頼られるようになった。「信頼があれば、必要な時に言葉が届く」という信念は現実になった。今では、同じ87年度生まれから「親のような存在」と慕われる。高強度のメニューの継続は、強いきずながあるからこそ。タッグを組んでから、新谷は1万メートルとハーフマラソンの日本記録を樹立した。

 現役時代は、12年ロンドン五輪で、日本勢44年ぶりに男子800メートルで出場をした。日本記録も樹立した名選手だった。輝かしい実績だけでなく、米国の公認会計士試験に合格し、フロリダ大大学院で学んだ学究の徒でもある。今のコンサルタント的な思考は、スポーツ大国で養われた。

 陸上にとどまらない豊富な知識で、アスリートに寄り添い、力を引き出している。熱心でありながらその熱を外に出さない奥ゆかしさもあって、陸上界にさわやかな新しい風を吹き込んでいる。 (倉世古 洋平)

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