車いすラグビーで東京パラ目指す壁谷 「共生社会」テーマにオンライン講演

[ 2020年8月27日 05:30 ]

オンラインで講演した壁谷(日本財団パラリンピックサポートセンター提供)
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 車いすラグビーで東京パラリンピック出場を目指す日本連盟強化指定選手の壁谷知茂(32=東京サンズ)が26日、日本財団パラサポによる講師育成プログラムの修了講演をオンラインで行い、プログラムを共同開発したアクセンチュア社の社員に「共生社会について」をテーマに語った。

 壁谷はカンボジアで歯科医の研修プログラムに参加していた12年11月に事故で頸髄(けいずい)を損傷。両脇から下が動かない障がいを負い、14年から競技を始めた。東京パラ開催が決まって競技の認知度は上昇。環境は改善されてきているというものの、障がい者らの多様性を尊重する全員参加型の共生社会に関しては「よく耳にするようにはなったけど、どこか抽象的で明確に言える方は少ないと思う」と指摘する。

 障がいを持つと職業や学校の選択などで制限を受ける日本社会の現状に触れながら、車いす生活になってから留学した米国との違いにも言及。90年に障がい者差別を禁じ、雇用や交通機関、施設の利用などあらゆる分野で機会平等を保障する米国障がい者法(ADA)が制定された国で「車いすでレストランに入れないのは肌が黒いから入れないのと同じ」と告げられ「意識の違いを感じた」という。

 同様の政策実現にはバリアフリー化など多額の予算が必要になるが、米国では障がい者人口に基づく試算の末に実行。インフラが整備されることで障がい者が積極的な社会進出を果たして消費や納税などで貢献すれば「日本でも費用以上の効果があるのではないかと思う」と力を込めた。

 今後は東京パラを目指す一方で、プログラムで学んだスキルを生かして共生社会や多様性を考えるセミナーで講師を務めることになる。「アスリートは競技も大切だが、競技を通して何を感じてもらいたいのかという部分がある。こういう機会で考えていることや取り組んでいることの理解が深まる。発信できるのはありがたい」と意気込みを語った。

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