恩師が語る松田瑞生Vの秘けつ エリートのプライドが“対抗心”で大きく飛躍

[ 2020年1月27日 05:30 ]

東京五輪代表選考会マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)ファイナルチャレンジ第2戦 大阪国際女子マラソン ( 2020年1月26日    大阪市・ヤンマースタジアム長居発着 )

報道陣の質問にこたえる松田の恩師である大阪薫英女学院・安田監督(撮影・大森 寛明)
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 松田瑞生(24=ダイハツ)が日本歴代6位の2時間21分47秒で、2年ぶり2度目の栄光をつかんだ。

 恩師の冥利(みょうり)に尽きた。前田穂南の東京五輪出場内定に続き、松田も派遣設定記録を突破。会場で教え子の快走を見届け、大阪薫英女学院陸上部の安田功監督は眼鏡の奥の瞳を細めた。

 「マラソンで世界と戦える教え子が2人も出てきて、指導者としてこれ以上の喜びはありません」

 高校では松田が1学年上。当時の2人の関係を名将はこんなエピソードで表す。「松田は練習で(前田に)抜かれたら、言い返したりしてましたね」。1年目からレギュラーを張るエリートのプライドが行動の裏にあった。

 ライバルへの“対抗心”は、時に露骨な形で顔をのぞかせる。ある初夏の練習日、松田はサウナスーツに、毛糸の帽子姿でグラウンドに現れた。熱中症対策が叫ばれる現代では、無謀な行為。走り終わった袖口から滝のように滴る汗を見て、少女を支える根性を悟った。

 強じんなハートは、一朝一夕に養われたものではない。2年夏から急激に力をつけ、迎えた強化合宿。強豪校も集まるアピールの機会なのに、直前で松田は足を痛めた。安田監督は別メニューでの調整を告げ、本人も了承。だから深夜に届いたメールの文面に、名伯楽は驚いた。

 「全員と同じメニューをさせてほしい。これを乗り越えさせてほしい」――。

 差出人は母・明美さん。もちろん、申し出は拒んだものの、過保護と一線を画した教育には、理屈で通用しない迫力があった。

 「MGCの挫折を乗り越えて、人間的にも一回り成長できたのかな、と」

 恩師はこう分析した。2人の教え子が夢舞台を駆ける瞬間が今から待ち遠しい。

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