小林優香、日本発祥のケイリンで日本女子初五輪&初メダルへ 競技歴なしで飛び込んだバンクの道

[ 2019年11月5日 09:00 ]

2020 THE PERSON キーパーソンに聞く

自転車を掲げポーズを決める小林優香(撮影・久冨木 修) 
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 ガールズケイリンで圧倒的な強さを誇る小林優香(25=日本競輪選手会)は東京五輪の自転車競技の有力なメダル候補だ。バレーボールから転向し、20歳ですぐに頭角を現した逸材は、日本発祥の「ケイリン」で日本女子初出場、そして初のメダル獲得を狙っている。太腿回り65センチの“世界の脚”を武器とする日本のエースに、ナショナルチームの拠点・静岡県伊豆市で心境を聞いた。

 男子選手と競り合い、小林がペダルを踏み込んだ。W杯ケイリン2勝の脇本雄太(30)、12年ロンドン五輪代表の新田祐大(33)らトップ選手とともにトラックを走り抜ける。先導役はナショナルチームのブノワ・ベトゥ短距離ヘッドコーチ。先頭を入れ替えながらスピードを上げ、一気にゴールへ。激しく息が上がる。

 「普段競輪を見ている方でも感じたことのないようなスピードが魅力だと思う。室内だからこそ自転車の音もよく聞こえるし、迫力を感じていただける。生身の人間が、常に70キロ以上のスピードで走るのは凄いこと」と競技の魅力を語る。

 元々はバレーボール出身。実業団の西日本銀行でプレーしていた母・真理さんの影響で、中高時代はバレーに熱中した。佐賀県内の短大に進学後も競技を続けたが、1メートル64とバレー選手としては小柄であることが悩みだった。転機は12年。ロンドン五輪で自転車競技「チームスプリント」をテレビで見て魅了され、自転車挑戦を決意した。

 「バレーボールは5セットとかプレーするので、体力があった。元々筋肉が柔らかいので、疲れにくい」。かつて悩みの種だった身長も、自転車では問題ない。良質な筋肉はペダルをこぐことに適していた。

 入学した日本競輪学校(現日本競輪選手養成所)では記録会で200、400、1000、2000メートルの全4種目で基準タイムをクリア。女子初(当時)のゴールデンキャップ(訓練で着用するヘルメットキャップの最高位カラー)を獲得。在校成績1位で卒業した。

 「学校にいる時に東京五輪開催が決まり、運命だと思った」。ガールズケイリンと自転車競技の両立を心に誓い、プロの世界に飛び込んだ。

 14年5月にガールズケイリン選手としてデビュー。自転車競技歴なしからのスタートながら連勝街道を進んだ。順調に才能を開花させ、210戦189勝、通算61V。90%という圧倒的な勝率を誇る。

 自転車競技でも日本のエースとして活躍する。函館開催の競輪レースで一緒になった新田から誘われ、16年から自転車競技のプロチーム「Dream Seeker」の一員となって五輪出場を目指してきた。昨年12月のW杯第3戦(ベルリン)女子ケイリンで日本人初のメダル獲得となる3位になるなど、東京五輪の表彰台を視野に捉えるようになった。

 ブノワ・ヘッドコーチは「小林はロングスプリントが得意で、長い時間スピードを持続させることができる。東京五輪では結果を出すことができると信じている」と期待を込める。同じスピード持続型の脇本と一緒に練習していることもプラス。「脇本さんが近くにいて、その大先輩を見ながら練習できるという環境」と刺激を受け、武器に磨きをかけている。

 10月のアジア選手権(韓国・鎮川)女子ケイリンで連覇を狙ったが2位。世界女王・李慧詩(リケイシ)(香港)にわずかに及ばなかった。「悔しいが、世界王者との差は縮まっているので収穫はあった。あくまで世界王者になることではなく、五輪王者になることが目標」と来夏を見据える。

 現在は地元の九州を離れ、ナショナルチームの拠点がある静岡で活動している。競技優先で、ガールズケイリンのレースにほとんど出場しない。「いろいろ犠牲にしてトレーニングをしている。一番大きく変化したことは収入面」。15年ガールズグランプリで優勝するなど年収が3000万円を超えた時期もあったが、現在ガールズケイリンの収入は約6分の1。「今は両親に頼っている。25歳の女性としては親不孝かも…。それでも助けてくれるので本当に感謝している」。食事にも細心の注意を払うストイックな生活で、80キロ台だった体重は約20キロも落とした。それでも、太腿回りは男子もしのぐ65センチ。“世界の脚”を武器にスピードに磨きをかける。

 今後は今月末の香港を皮切りにニュージーランド、オーストラリアとW杯を転戦する。「W杯は3戦しか出場しないが、その分練習を積んでいる。東京五輪で金メダルを獲ることが夢。それが自転車を始めたきっかけでもあるので、絶対にかなえたい」。表彰台の一番上を目指し、強い気持ちでペダルをこぐ。

 ▼小林 優香(こばやし・ゆうか)1994年(平6)1月18日生まれ、佐賀県鳥栖市出身の25歳。14年5月デビュー。ガールズケイリン通算210戦189勝、61V。15年ガールズグランプリ優勝。14、15年ガールズ最優秀選手賞。競技では昨年12月のW杯第3戦(ベルリン)女子ケイリンで銅、今年1月のアジア選手権女子ケイリンで金、6月のモスクワGP女子ケイリン金、女子スプリント銀、サンクトペテルブルクGP女子スプリント銅。10月のアジア選手権女子ケイリン銀。ガールズケイリンの師匠は藤田剣次(福岡・85期)。ホームバンクは久留米。1メートル64、64キロ。

 ▽自転車競技トラック種目の東京五輪への道 男女各6種目(ケイリン、オムニアム、スプリント、チームスプリント、団体追い抜き、マディソン)。男女計189人が出場。開催国枠はなし。18年7月6日から20年3月1日までのW杯、各大陸選手権、世界選手権で付与されるUCIポイントの上位国に出場枠が与えられる。女子ケイリン、スプリントはチームスプリントの上位8カ国からそれぞれ2人が出場でき、さらに2種目それぞれの上位7カ国に1人ずつの出場枠が与えられる。

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