【菊谷崇 キャプテン目線】驚異!!姫野の突破力 ハット松島より上のゲインNo・1

[ 2019年9月22日 08:57 ]

ラグビーW杯1次リーグA組   日本30―10ロシア ( 2019年9月20日    味スタ )

姫野のピックゴー(撮影・吉田 剛)
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 日本は開幕戦で対戦したロシアに快勝し、悲願のベスト8に向け、好発進した。スポニチでは日本代表の試合翌日、2011年W杯日本代表主将の菊谷崇氏(39)が試合分析する「キャプテン目線」を掲載。重圧の中の勝ち点5を称え、No・8姫野和樹(25=トヨタ自動車)の突破力と、フッカー堀江翔太(33=パナソニック)の隠れたファインプレーも評価した。また、キック戦術を課題に挙げた。

 自国でのW杯開幕戦の重圧は計り知れない。その緊張は考慮すべきだ。ミスは出たが、4トライでボーナス点付きの勝利は、いい滑り出しと言えるだろう。

 セットプレー巧者のロシアに対し、スクラムはマイボールを全てキープ。ラインアウトは14回中13回成功という好データが残った。安定感は評価できる。残念だったのは、戦術的なキックがなかったこと。ボール保持率はイーブン。簡単に蹴り返せば当然、相手の保持率は高くなる。できれば、中盤から裏のスペースを狙うようなキックを使わず、継続してほしかった。相手に簡単に渡すだけになってしまった。満員の観衆が沸くようなトライを「狙って」いたように感じた。

 キックを使うのであれば、ランとパスで崩してからスペースを狙う形が望ましい。ましてやロシアには脅威的なタックルがあったわけではなく、連続攻撃を選択肢の最上位に持ってくるべきだった。そうすれば、足は止まり、後半にもっと突き放せたはずだ。

 個々の選手で目立ったのはNo・8の姫野だ。キックオフから最初のフェーズでのミスを修正し、縦を思い切って突くシンプルなプレーに立ち返ったのが良かった。ボールを持って走った距離=ゲインメーターは、両チームトップの121メートル。3トライのWTB松島より、日本ボールを前に運んだことになる。突破役としての力は十分、見せてくれた。

 フッカー堀江の機転が利いた“演技”も見逃せない。バタバタしていた時間帯に、痛んで倒れた場面が2度あった。素早く仲間が集合した点に、意図を感じた。フッカーが痛むと、スクラムもラインアウトも再開できないため、ゲームは止まる。落ち着かせるための戦術的な“間”のつくり方だったのだろう。

 次戦で対戦する世界1位のアイルランドはパワーが強調されるが、超一流選手のSOセクストンを止められるかどうか。パスの瞬間に絡んだり、ダブルタックルで完全に倒すような厳しいマークをしたりすることが必要だ。ロシア戦で見せたディフェンスをもう一段階レベルアップさせ、前に出て止め、反則をしないことが鍵になる。 (11年W杯日本代表主将、19年W杯アンバサダー)

 《ボールキャリーも姫野両軍最多17回》データが姫野の活躍を物語っていた。ボールを持って走った距離=ゲインメーターは、121メートルで両チームトップ。ボールを持って走った回数=ボールキャリーも17回で、両軍合わせてトップだった。ボールを多く託され、多くの前進したことが分かる。驚異的だったのが、3トライを奪った松島を上回ったことだ。通常、ゲインメーターはスピードがあるバックスがトップとなることが多い。広いスペースがある分、長い距離を走りやすいからだ。姫野はNo.8。目の前に体が強い選手が対峙(たいじ)しているポジションで、再三突破したことになる。今後は、右肩負傷で戦線離脱中のマフィが戻ってきた際の起用法にも注目だ。

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