【バスケW杯 日本の対戦国分析】米国 もうトリプルスコアではない!

[ 2019年8月25日 17:50 ]

米国代表のガード、ケンバ・ウォーカー(AP)
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 日本は1次予選最後となる9月5日に世界ランク1位で大会3連覇を狙う米国と激突する。米国代表は多くのNBAスター選手が続々と辞退したことで注目を集めたが、W杯と五輪は今後2年続けて戦わねばならないスケジュール。米国の真の代表?は五輪にシフトしていく可能性が大きいので、W杯は次世代のスターを狙う若手中心の面々で編成されていくだろう。つまりこれは「想定内」の出来事だったと解釈している。

 米国は24日にオーストラリアのメルボルンで行われたオーストラリア代表(同11位)戦で94―98(前半49―48)で敗れた。26日にカナダとの強化試合が残されているが、他国の代表を相手にした試合は2勝1敗。この大会から米国代表の指揮を執るグレグ・ポポビッチ監督(70)にとっては前途多難な状況にも見える。

 では優勝するための戦力が不足しているのかと言えばそれは違う。オーストラリア遠征メンバーから脚を痛めたレイカーズのフォワード、カイル・クーズマ(24)が外れたが、最後の枠に滑り込んだ?ガードのデリック・ホワイト(25=スパーズ)はマイナーGリーグの選手で編成されたW杯米大陸予選では米国代表として出場した経験があり「USA」と記されたユニフォームを初めて着るわけではない。なによりNBAでも代表でも監督はポポビッチ氏であり、指揮官の絶大な信頼を得ている姿が見え隠れしている。

 今回の大黒柱はホーネッツからセルティクスに移籍したポイントガードのケンバ・ウォーカー(29=185センチ、83キロ)だ。昨季はNBA10位で自己ベストの25・6得点をマーク。シーズン全82試合に出場し、4・4リバウンド、5・9アシストも自身8季目で最高成績だった。オフにはオールNBAのサードチームに選ばれ、もしスター選手だけで米国代表が編成されたとしても今季の年俸が3274万ドル(約34億円)に達するウォーカーはその中に残ったかもしれない。

 サイズはいたって平凡。しかし静止した状態から一歩前に出るスピードと歩幅、さらに加速力と跳躍力、ステップバックしながらもバランスと精度を失わないシューティング・タッチは今W杯でも飛びぬけた存在だろう。3点シュートの成功率は昨季35・6%。1試合平均(34・9分)では8・9本放って3・2本を決めた計算になる。彼の突破力を警戒すればたちまちアウトサイドからジャンプシュートを浴び、シュートを警戒すれば絶妙の“チェンジ・オブ・ペース”を持つムーブで振り切られてしまう。これは別に日本だけが直面する問題ではなく、米国が対戦するすべての国に共通する試練でもある。

 では米国戦での突破口は何か?それはやはり八村塁(21=ウィザーズ)ということになる。米国はウォーカーとジャズのドノバン・ミッチェル(22=191センチ、98キロ)がガード、キングスのハリソン・バーンズ(27=203センチ、101キロ)とクリス・ミドルトン(28=203センチ、101キロ)がフォワード、そしてナゲッツのメイソン・プラムリー(29=211センチ、107キロ)か昨季のブロックショット王、ペイサーズのマイルズ・ターナー(211センチ、113キロ)がセンターとして先発すると見られている。

 ただしセンターの2人以外、インサイドで頼れるディフェンダーはいない。それがオーストラリア戦での敗因のひとつだった。NBAでのキャリアはもちろん米国代表の方が上だが、八村はNBAの現役3選手を先発に名を連ねていたドイツ戦で31得点をマーク。ミドルトンであれ、バーンズであれ、ベンチから出てくるセルティクスのジェイソン・テータム(21=203センチ、94キロ)であれ、フィジカル的にドイツ戦以上の圧力は感じないはずだ。

 ただし昨季1試合平均でリーグ1位となる2・69本のブロックショットを記録したターナーのウイングスパン(224センチ)は頭に入れておくべきだろう。今までの感覚とは違ったより高い位置でボールをはたかれてしまう可能性が大。それはノーマークになって速攻からレイアップに持ち込む全選手がインプットしておくべき数値でもある。彼はフリースローの成功率でもセンターとしてはかなり高い77・1%(NBA4季平均)という成績を残しており、ファウルゲームのターゲットにもならない。そこが国際大会向きだともされておりウォーカー同様に要注意人物だ。

 もっともスーパースター不在とは言えさすがに米国代表は多士済々。ウォーカーとバックコートでコンビを組むミッチェルのユーロステップを駆使したペネトレーションはNBAでも折り紙付きだし、ベンチから出てくるネッツのジョー・ハリス(27=198センチ、99キロ)は昨季球宴の3点シュートコンテストで優勝したリーグ屈指のシューター。3点シュートの成功率は驚異的な47・4%に達しており、3点シュートラインが49センチ短い国際大会での試合では確実に50%を超えてくるだろう。

 それでも米国代表と戦うことは必ず大きな財産になる。五輪を含めた世界大会で日本が米国と対戦するのは1972年のミュンヘン五輪以来。その時のスコアが33―99で、「どうすれば立ち向かえるか」と考えられるようになったこと自体が大きな進歩だとも言える。日本でも生中継される49年ぶりの日米決戦。どこかで日本が米国を本気にさせる瞬間がやって来ると私は信じている。(高柳 昌弥)

 <米国の強化試合成績>
 ▼9日=〇97―78NBA選抜
 ▼16日=〇90―81スペイン(2)
 ▼22日=〇102―86オーストラリア(11)
 ▼24日=●94―98オーストラリア(11)
 ▼26日=?カナダ(23)

 *カッコ内の数字は世界ランク

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