五輪代表4人輩出 「マラソンの天満屋」武冨監督 選手を集団行動で切磋琢磨

[ 2019年6月12日 09:00 ]

メダル獲りの極意 五輪書

天満屋・武富豊監督
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 剣豪・宮本武蔵の兵法書「五輪書」にちなんで、五輪競技の指導者の指導哲学を紹介する。陸上女子マラソンの五輪代表を4人も輩出している天満屋の武冨豊監督(65)に「切磋琢磨(せっさたくま)の極意」を聞いた。

 天満屋には選手が伸びる環境がある。武冨監督が重んじるのは、チーム文化。集団行動で切磋琢磨させる。やる気にさせた上で、能力に応じたメニューを組み立てる。そうして、00年シドニーからロンドンまで、4大会連続で女子マラソンの五輪代表を輩出した。

 「五輪に出る選手は良さがあるからで、それを次の世代にも共有させたい。全員が一緒に練習をする中で、自分も五輪に出たいと思う子が出てきて、後に続く流れができた」

 週に5日、朝練習を全員で行う。女子の場合、チーム内にライバル選手がいると別々で指導をするケースもあるが、岡山の強豪には無縁の話だ。全員で海外合宿し、いざ五輪になればメンバー全員で現地応援。練習から私生活まで、どんな取り組みが五輪出場につながったのか、チームメートに肌で感じさせることが最大の目的だ。

 現役時代はマラソンを30回以上走った。自分でメニューを考える競技環境だった。「そこで気付いたのは、いい選手の良さは一緒にいないと分からないということ。五輪へ行く選手とそうでない選手はどう違うのか。選手が感じるしかない」。いい選手がいるところにいい選手が育つという信念が生まれた。

 順風満帆ではない。天満屋に移った92年。苦い記憶がある。
 「この子なら五輪に行けるかもいう選手がいた。当時は太ったら速く走れなくなると考え、食事を節制させた。その結果、拒食症になり、精神的にもやられ、最終的に走れなくなった。強くしたいという入れ込みが、その結果を招いたと思う」

 以後、女性特有の体調の変化については、岡山大の協力を得て医師に任せた。2度と同じ選手を出さないために「しっかり食べて走れ」が骨太の方針だ。

 9月15日の東京五輪代表選考レース「MGC」には前田穂南、小原怜の2人が出場する。練習熱心な前田は「やりすぎないように」と細心の注意を払い、能力あるが波が激しい小原には「前田に練習で負けているようでは五輪にいけない」と日頃から尻を叩く。タイプが異なる2人のエースが「マラソンの天満屋」復活を担う。

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2019年6月12日のニュース