【パラリンピアン支える力】流れや気持ちまでくむ「1分間」の修理

[ 2016年9月17日 10:27 ]

<リオパラリンピック>メカニックの三山氏(左)

 「マーダー(殺人)ボール」とも呼ばれ、車いす同士が激しくぶつかり合うタックルが魅力の車いすラグビー。当然、試合中に転倒する選手も多い。その際にトレーナーと一緒に駆け寄るのがメカニックだ。選手を起こし、通称「ラグ車」と呼ばれる専用の車いすに異常はないかをチェックする。

 07年から日本代表のメカニックを務めるのが三山慧さん(30)。本業は車いす関連部品の輸入代理店の会社員だが、日本代表活動中はチームに同行する。試合中、最も多い仕事はパンクの修理。ワンタッチで交換できる構造になっているが、多い時には1試合で15本ほど交換する。

 1台約100万円と高額で、頑丈なラグ車だが、時には壊れることがある。コート内で修理に与えられる時間は1分間。メカニックの腕の見せどころだ。8年前の北京大会では、現在も代表で活躍する仲里進の車いすの後方についたキャスター(車輪)が割れた。三山さんはそれを1分で修理し、仲里をベンチに下げずにコートに送り出した。「試合の流れを変えたくない。仲里選手は出場機会が多くはないし、出場時間を減らさずにすんでよかった」。ゲームの流れや選手の気持ちまでくんで作業する。

 だが、三山さんが最も大事にするのは試合中以外の仕事だ。あらかじめ車いすに傷みはないか入念に調べ、ひびがあったならば割れる前に修繕する。「もしゲーム中にフレームが折れてしまったら、選手は交代しないといけない。車いすのせいで負けてほしくない。試合中はパンク修理以外に出番がない方がいい」。三山さんがいるから、選手たちは故障を恐れずに激しくぶつかっていける。

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2016年9月17日のニュース