ロシアにまた激震 金候補のレベデフが五輪出場辞退「名誉のためだ」

[ 2016年6月1日 12:50 ]

 リオデジャネイロ五輪を前にしてドーピング問題で揺れ動いているロシアのスポーツ界にさらなる“激震”が走った。

 AP通信によると、前週に行われたレスリングのロシア選手権の男子フリー57キロ級(最軽量)で優勝して代表が決まっていたビクトール・レベデフが31日になって五輪出場を辞退。「五輪に出れば金メダルを獲れるだろう。しかし夢がかなったからと言ってもう特別な感情はわいてこない」と、世界選手権を2度(10、11年)制している28歳の元王者は代表の座から自ら去っていった。

 ロシア選手権はレベデフの出身地でもあるシベリアのヤクーツク(サハ共和国)で開催。昨年のヨーロピアン競技大会でも優勝しているレベデフは準決勝でイズマイル・ムスカエフと対戦した。同選手は紛争地帯でもある北カフカス地方にあるダゲスタン共和国の出身。試合はレベデフが4―3とリードしたところで「不当に判定されている」と激怒したムスカエフがレデベフの胸を突いて中断した。すぐにコーチとムスカエフを応援していたサポーターがマット内に乱入。暴動阻止専門の警察部隊が制止に入る緊迫した事態となった。

 ダゲスタン共和国は少数民族の“集合体”でロシア人の比率はわずか3%。イスラム過激派による爆破事件も発生するなど治安は安定していない。その一方でレスリングは少数民族にとって存在感をアピールできる人気競技で、ムスカエフにも多くのサポーターが支援していた。

 今回は開催場所が対戦相手だったレベデフの地元とあって“ホームタウン・ディシジョン”を感じやすい一戦。大会は終了したものの「ロシアの新たなスキャンダル」として各メディアが大きく取り上げていた。

 これを受けてレベデフは「彼(ムスカエフ)の態度は間違っている」と相手の行為を批判したうえで「確かに彼は不当な扱いを受けていたし、審判は自分に有利な判定をしていた」と“反タゲスタン”とも思える不可解なレフリングには不快感を表明。「これは自分の名誉のためだ」として代表の座を返上した。

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2016年6月1日のニュース