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中村俊輔 天才レフティーは、実は「右」もすごい トップアスリートの持つ身体能力

[ 2022年10月18日 12:15 ]

横浜FC・中村
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 来季のJ1昇格を決めた横浜FCは18日、元日本代表MF中村俊輔(44)が今季限りで現役を引退することを正式に発表した。日本代表やスコットランド・プレミアリーグのセルティックなどで一時代を築き、J1でも横浜Mで史上初となる2度のMVPを獲得。左足の芸術的なFKは、世界的な名手としてその名をとどろかせた。そんな希代のファンタジスタを、取材した各時代の担当記者が振り返った。

 天才レフティー(左利き)として知られる俊輔だが、実は蹴ること以外はほぼ右利き。野球で言えば、投げるのも右なら、打つのも右だ。磐田時代、練習後に遊びで野球をしている貴重なシーンを目撃したが、右打席でいい当たりを何本も飛ばしていたことを覚えている。“トップアスリートは、どんな競技をやってもやっぱり凄いんだな”と感心させられた瞬間でもあった。

 そんな凄さを、幸運にも実際に肌で感じられたこともある。横浜M時代の13年にMVPを受賞した俊輔は、その賞金で卓球台を購入し、クラブに寄贈。クラブハウス(みなとみらいのマリノスタウン)のリラックスルームに置き、練習後に選手同士などで対決して楽しんでいた。ある日、その対決相手に指名された。結果は、利き手の右で行った初戦は惨敗。さらに「ハンデ上げるよ!」と言われ、俊輔が左手にラケットを持ちかえた2回戦も、同じく惨敗に終わった。もちろん、私自身に卓球の実力がなかったと言えばそれまでだが、的確にコーナーを狙ってピンポン球を打ち返すその姿には、トップアスリートの凄さを感じずにはいられなかった。

 サッカーでも黄金の左足だけがクローズアップされがちだが、右足のキックもかなり精度を誇る。本業のサッカーでもオフに一度、敵チームの一員として対戦させてもらったことがあるのだが、フェイントからシュートの一連の動作は、普段の5割程度の力だったはずなのに、見えないほど衝撃のスピードだった。

 努力もできる天才と言われる俊輔だが、生まれ持った身体能力もやはり凄かった。もしサッカーではなく違う競技をやっていても、自分自身を客観視でき、とことん追求するその探求心と努力で、おそらくある程度の地位まで上りつめたのではないだろうか。
(03~22年俊輔担当・垣内 一之)

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2022年10月18日のニュース