×

中村俊輔 気配り欠かさない人柄 「前向きで走ったよ!」心遣いに何度も心を救われ

[ 2022年10月18日 12:15 ]

磐田時代の中村俊輔(2017年3月撮影)
Photo By スポニチ

 来季のJ1昇格を決めた横浜FCは18日、元日本代表MF中村俊輔(44)が今季限りで現役を引退することを正式に発表した。日本代表やスコットランド・プレミアリーグのセルティックなどで一時代を築き、J1でも横浜Mで史上初となる2度のMVPを獲得。左足の芸術的なFKは、世界的な名手としてその名をとどろかせた。そんな希代のファンタジスタを、取材した各時代の担当記者が振り返った。

 J1磐田を担当していた19年の春。練習場では選手が障害物の置かれた10メートルほどのコースを前向き、後ろ向きで交互に走るメニューに取り組んでいた。翌日の紙面の画を撮影しようと選手の進行方向に陣取り中村にレンズを向ける。

 ただスタンバイが遅くカメラを向けた時点で既に後ろ向きのラスト1本となっていた。顔が写る画を諦めながらファインダーをのぞいていると、中村がなぜか正面を向いてスタート。短い距離を走り切るとシャッターを切った記者に笑みを浮かべて声を発した。

 「後ろ向きで走る順番だったけど、カメラ構えてたから(顔が写るように)前向きで走ったよ!」

 小さな気配りを欠かさない魅力のある人柄。磐田在籍時代は定期的に番記者との会食の場を設けてくれた。シーズンオフに去就に関する情報を得ようと張り込む私たちに自ら声をかけ、喫茶店で時間をともにしてくれたこともある。当然そこで何かを明らかにすることはなかった。だがこちらの立場を理解した上での心遣いに何度も心が救われた。

 現役を退く寂しさはもちろんある。ただ今後は指導者としての活躍に期待はふくらむばかりだ。“稀代のレフティー”の教え子に取材できる日が一日も早く訪れることを今は願っている。
(17~19年磐田担当・加賀田 篤)

続きを表示

2022年10月18日のニュース