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史上初のW杯女性審判員・山下良美主審 陸上トレで走力強化「あと5カ月。後悔しないように」

[ 2022年6月29日 06:10 ]

イエローカードを持ち、フェアプレーを求める山下良美さん(撮影・西海健太郎)
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 日本からW杯カタール大会(11月21日開幕)に参加するのは森保一監督率いる日本代表だけではない。カタール大会では史上初めて女性審判員6人が選ばれ、日本から山下良美主審(36)も名を連ねた。Jリーグやアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)で初の女性主審を務めた経歴を持つパイオニアが、W杯でも新たな歴史をつくる。

 女性初のW杯主審に選出されてから1カ月余り。山下さんは「日がたつにつれて責任の大きさを感じている。ただネガティブな方向ではなく、責任を担えるという喜びも感じながら過ごしている」と穏やかに話した。

 東京都中野区出身で、「4歳か5歳の時」2歳上の兄の影響を受け、地元クラブでサッカーを始め、すぐにのめり込んだ。高校時代はバスケットボール部に所属したが、大学で再びサッカー部に加入。大学の先輩で女子審判員の坊薗(ぼうぞの)真琴さん(41)に強引に誘われ、4級審判員の資格を取得した。卒業後も社会人チームでプレーしながら審判も続けていた。

 10年、当時のトップリーグ「なでしこリーグ」の副審を担当できる2級の資格を得たことが転機になった。「日本のトップリーグに関わる責任を感じ、審判という役割に向き合わないといけないと思った」と審判の道を歩む決意を固めた。15年には国際審判員に登録。国際大会で笛を吹くようになった。

 サッカーの審判は選手と同じくらいの運動量が求められるが、特に身体能力が優れているわけではなかった。「足には自信がなかった。チームの中でいつも遅い方から2番目でした」と苦笑する。レベルの高い試合になるほどフィジカルも重要になる。そこで国際審判員に登録した後、陸上出身のコーチを雇い、スプリントに特化したトレーニングを始めた。フォームを見直し、筋力トレーニングの内容も変えた。

 効果はすぐに表れた。トレーニング開始前に6秒01~03だった40メートル走のタイムは最高5秒56まで伸びた。「力を使わず余裕を持って走れるようになった。(審判は)常に余裕を持って判断しなければいけない仕事なので大きい」。走力強化はレフェリングのレベルアップにつながった。

 21年からJリーグの審判員となり、同年5月のJ3リーグ戦でJ史上初の女性主審を務めた。昨夏の東京五輪や今春のACLでも笛を吹いた。男子と女子の試合を比較し「人やボールの速さではなく、ゲームの展開の速さが違う」という。

 W杯では世界トップクラスのスピードの中で判定を下さなければいけない。その時のために地道な努力を続けている。週末は試合を裁き、平日はスポーツ施設での勤務後、夕方からインターバル走や高強度の長距離走で体をいじめ抜いている。

 今後、セミナーなどを経て、W杯での担当試合が決まる。山下さんは「あと5カ月。後悔しないように、できることを逃がさずやっておきたい」と表情を引き締めた。

 ◇山下 良美(やました・よしみ)1986年(昭61)2月20日生まれ、東京都中野区出身の36歳。鷺宮小―中野八中―都立西高―東学大。4歳でサッカーを始める。中学、高校時代はバスケットボール部。大学時代から審判員の資格を取得。13年女子1級審判員となり、15年国際審判員登録。担当した主な国際大会は16、18年U―17女子W杯、19年女子W杯、21年東京五輪、22年女子アジア杯、ACL。21年5月に女性で初めてJリーグで主審を務める。1メートル65.5。

 ▽W杯の審判 国際サッカー連盟(FIFA)が5月19日に発表したW杯カタール大会の審判団は主審36人、副審69人で、女性審判員が3人ずつ含まれた。VAR(ビデオ・アシスタントレフェリー)は24人。W杯で女性が審判団入りするのは史上初で日本からは男女を通じて山下主審だけが選ばれた。審判員は今夏にドーハなどで行われるセミナーに参加する。主審は補助の役目となる第4審判員を務める場合もある。

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