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J3昇格の今治を即J2へ 41歳元日本代表MF橋本英郎が“覚悟”示す

[ 2020年6月25日 05:00 ]

チームをけん引する最年長の橋本英郎(FC今治提供)
Photo By 提供写真

 27日にJ2が再開、J3は開幕する。新型コロナウイルスの感染拡大により、約4カ月遅れてのスタート。昨季JFL4位で、J3に初昇格した今治にとっては待望の船出となる。チーム最年長の元日本代表MF橋本英郎(41)がプロ23年目のシーズンに秘める“覚悟”とは――。矢野将文社長(44)の描くビジョンとともに、J新参クラブの横顔に迫った。

 不思議と高揚感はない。ようやく27日に決まった今治のJ3デビュー(アウェー岐阜戦)。待ち望んだJの舞台が目前に迫っても、橋本は複雑な心の内を言葉に乗せた。

 「(サッカーができる)喜ばしい瞬間もある半面、いつか感染者が出て、また中断してしまうんじゃないか、という思いもあって、スッキリしない感じです」

 プレーにも通じる冷静な判断力が一辺倒なスタンスを許さない。プロ23年目。キャリアは自粛期間も有意義な形で“制圧”した。

 「(中断期間中に)試合に対するモチベーションは一度ゼロにしました。家族と過ごしたり、外に出られないからこそできることに気持ちを向けていました。あと、SNSはあまり得意でなかったんですけど、サポーターの方とメッセージをやり取りして、凄く(開幕を)楽しみにしていただいているな、と感じました」

 交流を通じて、頭に浮かんだスタジアム招待プラン。2年前に新天地を求めた時の初心がよみがえっていた。

 「今治は地域とクラブの密着が進んでいる気がします。僕らのチームは地域を活性化する一つのツール。今回、コロナのことで影響を受けている人が多いわけですけど、僕らが力を与えられる要素を持っていると思うし、J2に昇格すれば、人の流れも変わってくる。それはJ1のチームでタイトルを目指すのとは、また違うモチベーションですよね」

 岡田武史オーナーとは、天王寺高で先輩後輩の間柄。日本代表監督時代に招集され、師事もした。とはいえ、絆だけの選択ではない。地元のサッカー熱、スタジアム構想などに共感し、今治の地を踏んだ。未知のJ3に挑むチームに注ぐ視線は熱く、優しい。

 「今年のJ3はJ2から落ちてきたチームが多いので、戦う環境としては厳しい。若い選手には、一つのゴール、一つの失点の重みを伝えたい。それは言葉にするのは難しい。実際に試合で体験したり、練習の中で高みを求めてやっているからこそ気づける部分ですから」

 G大阪の黄金時代を支え、日の丸を背負い活躍した名手も、5月で41歳を迎えた。

 「今年のシーズンって1年間もないじゃないですか。年齢的に引退っていう可能性も十分にありますよね。半年の重さを感じて、どこまで自分がしっかりできるか。いつ開幕するかってことにモチベーションは合わせなかったけど、実際に“これだけしかないんだ”って風になって、一日一日を大切にしなきゃいけないな、と」

 続けた言葉には、切迫感さえあった。

 「本来なら、J3に昇格したチームなら、ある程度、結果が出ればいいのかもしれません。ただ、自分の場合は、個人として、そんなに時間がないので、(J2)昇格を目標にやっていきたい。僕はその後がない、と思っているので。シーズン始まる前から、そう決めていました。この半年をいかに濃くできるか。それだけです」

 覚悟の出航。今治のために、不惑の男が体を張る。

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