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わずか数秒で“手のひら返し”…本田のハートをタフにする伊メディア

[ 2015年8月27日 11:00 ]

ACミランの本田

 「幽霊のようだった」。

 ACミランが敵地でフィオレンティーナに0―2で敗れた23日のセリエA開幕戦。味方に退場者を出し、前半39分に交代を告げられた本田は、翌日の地元紙で酷評された。冒頭の寸評は、中でも最低点の4・5(10点満点)を付けたトゥット・スポルト紙のものだ。

 ファンタズマ(イタリア語で幽霊)という表現は、地元メディアでも頻繁に使われる表現。前半早々に退場者を出し、チームが押し込まれる中、ピッチに埋もれてしまった状況では、そういった評価も致し方ないだろう。

 それにしても、である。イタリアの“手のひら返し”には、驚かされるばかりだ。活躍すれば大絶賛だが、次の試合でまったく振るわないと、それこそ今回の本田のように酷評される。

 本田がトップ下で先発し、1得点1アシストの活躍を見せた8月17日のイタリア杯3回戦のペルージャ戦では、こんな面白いことがあった。試合はイタリア国営放送RAIで全国に生中継。前半9分に、本田がミスでボールを奪われその姿がアップで映し出されると、ピッチリポーターを務めていたアメデオ・ゴリア記者はこうコメントした。「ミハイロビッチは常にベストの11人をピッチに送り出すと言っている。モントリーボ、ポーリがベンチに座り、本田がピッチにいるのは議論の余地がある」。

 するとその数秒後に本田がゴールを決めた。気まずいゴリア記者は当然、沈黙。そこはアナウンサーが空気を察し「本田にゴリアのコメントが伝わったのでしょうか」と冗談交じりにフォローし、解説者も本田へ賛辞の言葉を並べてその場をしのいだ。このわずか数秒足らずでの“手のひら返し”には、もう笑うしかなかった。

 ただ、この“手のひら返し”は、主に外国人選手に対するもので、イタリア人に対しはあまり使われないのも確か。例えば、イタリア代表MFモントリーボ。ここ数年は期待されながら活躍できていないが、彼に対する辛辣な批判は、あまり聞いたことがない。

 いずれにせよ、強靱なメンタルを持つ本田がこういった批判を気にするとは思えないが、厳しい環境に身を置き、周囲からのプレッシャーに打ち勝つことで初めて、日本人はたくましさを増すような気がする。(垣内 一之)

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2015年8月27日のニュース