ダービー彩る福島産“誇りの勝負服” 「河野テーラー」13年Vキズナの夢再び

[ 2020年5月28日 06:00 ]

武豊のサイン入りの勝負服を手に笑顔を見せる「河野テーラー」の河野社長(中央)と岡田由美子さん(左)、河野祐子さん
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 競馬の祭典「第87回日本ダービー」が31日、東京競馬場で行われる。福島競馬場の近くにある合資会社「河野テーラー」(福島市)は、騎手の勝負服を製作し、過去にはダービー馬・キズナなどの鞍上も彩った。今年も福島産の“誇りの勝負服”を着た騎手たちが、3歳世代の頂点を目指し、馬たちをエスコートする。

 勝利だけを思い、3人の職人たちが手を動かす。3代目の河野正典社長(48)は「注文伝票が42番だったとしたら“しに”なので消します。ボタンの縫い付けも、ラッキーセブンで7回(糸を)回します」とこだわりを明かす。「複数の手が入ると縁起が悪い」という先代の教えを守り、1人の職人だけで1着を作り上げる。

 「うちの勝負服を着ていない美浦の騎手はいない」と、きめ細かな河野テーラーの勝負服は競馬界で高い評価を得ている。昨年11月の福島競馬では、レース当日の朝にある調教師から「勝負服を忘れた」と連絡を受けた。「恥をかかせたくない」と、完成まで通常約2時間はかかる勝負服を午後のレースに間に合わせた。河野社長は「ニーズには応えたいし、どんな時でも手を抜くことはない。誇りを持ってやっている」と真剣な表情だ。

 先代はサニーブライアン、ジャングルポケットなどのダービー馬の鞍上の勝負服を作った。河野社長が後を継いでからも、キングカメハメハ、ウオッカなど4頭が優勝したが、特に思い入れがあるのは13年のキズナだ。

 11年には東日本大震災と原発事故の影響で福島競馬が中止となった。地元が元気を失い、心を痛めていた河野社長の元に、勝負服の注文が入った。震災の時によく用いられた「絆」という言葉から名付けられた一頭だった。関係者やファンの期待通りに成長したキズナは、1番人気に応えてダービーを制覇。抜け出していたエピファネイアをゴール手前で外から差し切った。「福島を明るいニュースで勇気づけられた。勝負服はウチだよ、福島ブランドだよと発信できたことがうれしかった」と振り返る。

 今年もワーケア(牡3=手塚)やビターエンダー(牡3=相沢)など5頭が登録し、福島ブランドを背負って勝負に挑む。「ダービーは夢舞台で世代のドラマ。うちの勝負服で穴をあけてくれるとうれしいですね」と河野社長。色鮮やかな“福島の誇り”が東京の2400メートルを駆け抜ける。(近藤 大暉)

 ○…人気女性騎手の藤田菜七子(22)とも“縁”がある。16年4月10日にJRA初勝利(福島9R、サニーデイズ)、先月25日に100勝(福島1R、シルバージャック)を挙げたが、ともに河野テーラーが勝負服を提供していた。河野社長は「節目にウチの勝負服を使ってもらえることに、喜びを感じています」と笑顔を見せた。

 ▽河野テーラー 競馬の騎手の服の製作やメンコ、ジャンパー、競馬のグッズなどの製作を行う福島県福島市の合資会社。JRAには美浦7割、栗東3割で提供している。地方競馬の的場文男や森泰斗らも愛用し、海外の女性騎手のミカエル・ミシェルも着用した。使用する生地はポリエステル素材のエアロタイプが主流。メッシュや、シルク素材のサテンなどがある。ワンサイズで値段は約2万円。

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