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【1973年10月】みずいろの手紙/こんな歌イヤ!から紅白に あべ静江“セリフ”が効いた

[ 2011年10月3日 06:00 ]

あべ静江のセカンドシングル「みずいろの手紙」
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 ★73年10月ランキング★
1 ちぎれた愛/西城秀樹
2 神田川/かぐや姫
3 個人授業/フィンガー5
4 色ずく街/南沙織
5 ロマンス/ガロ
6 魅力のマーチ/郷ひろみ
7 みずいろの手紙/あべ静江
8 草原の輝き/アグネス・チャン
9 心の旅/チューリップ
10 青い果実/山口百恵
注目わたしの宵待草/浅田美代子
※ランキングは当時のレコード売り上げ、有線放送、ラジオ、テレビのベストテン番組などの順位を参考に、話題性を加味してスポニチアネックスが独自に決定。

【みずいろの手紙/あべ静江】

 こんな歌、冗談じゃない。歌えるもんか。最初に歌詞を見せられたとき、21歳のあべ静江のそれが正直な気持ちだった。

 デビュー曲「コーヒーショップで」は歌謡曲ではあったが、ミディアムテンポのちょっと文学的な匂いのする秀作だったが、セカンドシングルで用意された「みずいろの手紙」は同じ阿久悠の作詞ながら、メルヘンチックな10代のアイドルが歌うようなフレーズが並んでいた。

 あべが嫌だったのは、歌いだしのセリフの部分。「今でも愛しているといって下さいますか」だった。早い話が、フラれたか置いていかれた女が男に未練がましく手紙を書き、まだ私のこと好き?と尋ねている、といった歌詞。名古屋の美人女子大生DJとして、大人気となり、一見愛らしく清楚に見えるあべだが、実はかなりはっきりした性格で気になること、嫌いなことは包み隠さず言うタイプ。絶対歌いたくない、とスタッフにストレートに訴えた。

 が、彼女は既に素人ではなく芸能人。これが仕事とあらば、嫌でも何でも歌わなければならない。そう思うと、わだかまりは消えた。逆にテレビやステージでは、世の男性たちのリクエストに応えるように潤んだ瞳ではにかみながら、「今でも愛しているといって下さいますか」と甘えた声を出した。

 “作戦”は大成功。「コーヒーショップで」のレコード売り上げ27万枚に匹敵する、25万枚を売り上げ、年末の日本レコード大賞では最優秀新人賞候補にノミネート。デビュー2年目の74年には「みずいろの…」で紅白出場を果たした。

 三重県松坂市出身。父親は元バンドマン、母はNHKの素人のど自慢で全国優勝を果たし、地元三重や名古屋でラジオのDJを務めるかたわら、歌手としても活動していた。いわばあべの芸能界入りはその血筋から来るものでもあった。

 小学1年生からラジオドラマやテレビドラマに子役として出演。時を経て短大に進学すると、タレント養成所に通い、ここで東海ラジオのディレクターにスカウトされDJに。澄んだ声とその大きな瞳、整った顔立ちはすぐに東京でも知られる存在となり、たちまちスターに。連日ファンレターが800通届くという一大ブームとなった。

 2曲のヒットを放った後、女優業にも本格的に進出。最近では再度マイクを握り、懐かしの歌声を披露している。

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