藤井聡太王将 “レアケース”乗り越え、さらなる高みへ「改めて広く想定しておく必要性を感じた」

[ 2024年1月30日 06:00 ]

雲海を指さす藤井王将(撮影・光山 貴大、会津 智海、大城 有生希、藤山 由理)
Photo By スポニチ

 藤井聡太王将(21)=8冠=が、開幕3連勝した菅井竜也八段(31)との第73期ALSOK杯王将戦7番勝負(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)の第3局から一夜明け、対局場の島根県大田市「さんべ荘」で本紙恒例の勝者の記念撮影に臨んだ。さんべ荘近くで雪だるまをめで、雲海を背にポーズを取った。せっかくつくったと金を対価なく失う「年1回級」のミスを乗り越えてのシリーズ王手。第4局は2月7、8日、東京都立川市「オーベルジュ ときと」で指される。

 標高450メートルの対局場周辺は雪が残っていた。勝者の記念撮影は通算11度目。指し手を読むように、経験則から最悪の事態が脳裏をよぎったのだろう。車で数分の撮影スポットへ向かう藤井は「自分が雪だるまの格好をするのかと思いました」と身構えていた。

 到着した大山隠岐国立公園の霧の海展望所で、勝利のご褒美に驚いた。「雲海がこんなに奇麗に見えたことないです」。低気圧が通過後、高くなった湿気が放射冷却されて霧になる。開幕から3つ並べた白星と雲海の白が重なったのだろうか。

 終局後、「うっかりしていた。だいぶんまずくした」と告白した昼食休憩明けの56手目△7五歩。自陣から4手を費やして成った8七とが5手後、対価なく取られてしまった。そのうっかり度合いを「年に2、3回もない」とレアケースだと表現。それでも逆転までは許さない安定感が全8冠独占の礎でもあった。

 「序盤から予想しない戦型になった。改めて広く想定しておく必要性を感じた」

 第3局は対菅井戦16局目で初の戦型、向かい飛車。7局あった三間飛車、5局の中飛車、3局の四間飛車でもなく、8筋でお互いの飛車が向き合った。振り飛車党の第一人者が繰り出す秘策に対局中、対応できる地力には恐れ入るが、勝てばこそ、課題へ前向きに取り組むこともできる。

 2月からは棋王戦とのダブルタイトル戦へ突入する。王将戦は持ち時間8時間の2日制7番勝負、棋王戦は4時間の1日制5番勝負。加えて王将戦は振り飛車党の菅井、棋王戦は居飛車党の伊藤匠七段との対戦で、対照的な対局形式、対戦相手となった。

 同様のダブルタイトル戦は昨春、当時の渡辺明名人に挑んだ名人戦、菅井を迎え撃った叡王戦で経験済み。とはいえ、防衛への負担が増すことは間違いない。「伊藤さんとは昨秋の竜王戦でも対戦した。その経験を基にしっかり考えたい」と前を見据えた。

 棋王戦では第1局から富山県魚津市、金沢市、新潟市と能登半島地震の被災地に近い対局場を巡る。「地震があって凄く大変な状況の中で準備してもらえる。ありがたいと思うし、それに応えられたらと思う」。大山康晴15世名人と史上1位で並ぶタイトル戦19連覇、そしてその更新へ。21歳は課された使命を指し手で果たしていく。


 ≪名人戦挑戦者明日決定も≫ 2月からダブルタイトル戦へ突入する藤井にさらなる挑戦者が名乗りを上げる。例年4月開幕の名人戦挑戦者が、あす31日に指されるA級順位戦の豊島将之九段―斎藤慎太郎八段、佐藤天彦九段―菅井で決まる可能性がある。条件は1敗で首位の豊島が勝ち、一人2敗で追う菅井が負けたケースのみ。「4月からなので当事者という意識はない。普通に観戦者という感じです」。経験豊富な大ベテランのたたずまいで21歳は対局を見守るという。

続きを表示

この記事のフォト

「美脚」特集記事

「STARTO ENTERTAINMENT」特集記事

2024年1月30日のニュース