「鎌倉殿の13人」蒲殿・迫田孝也　三谷幸喜氏への感謝と恩返し「まだマジックアワーを超えていないよ」

「鎌倉殿の13人」源範頼役・迫田孝也インタビュー（下）

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第23話。生き延びた源頼朝（大泉洋）を出迎えた源範頼（迫田孝也）だったが…（C）NHK
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　中盤に差し掛かり、一段と神がかる展開が続くNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」（日曜後8・00）。俳優の迫田孝也（45）が今作随一の“いい人”源範頼役を好演し、新境地を開拓した。脚本を手掛ける恩人・三谷幸喜氏（60）への思いを迫田に聞いた。

　＜※以下、ネタバレ有＞

　稀代の喜劇作家・三谷氏が脚本を手掛け、俳優の小栗旬が主演を務める大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。新都・鎌倉を舞台に、頼朝の13人の家臣団が激しいパワーゲームを繰り広げる。三谷氏は2004年「新選組！」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は8作目にして大河初主演に挑む。

　迫田演じる源範頼（蒲冠者殿／蒲殿）は、源頼朝（大泉洋）の異母弟。源平合戦においては、源義経（菅田将暉）と並び平家討伐軍の総大将を任された。坂東武士団とともに汗を流す努力の武将。迫田が範頼の誠実さを見事に体現。陰謀渦巻く今作きっての“癒やしキャラクター”となった。

　「真田丸」の真田家重臣・矢沢三十郎頼幸役など、三谷作品の常連。出会いは06年、三谷氏がメガホンを執った映画「ザ・マジックアワー」（08年公開）のオーディション。合格し、AD役に起用された。

　三谷氏も会場にいたオーディションの課題は2役の会話劇。シーンが書かれたペラ1枚の紙を現場で渡されたが「僕、なぜか台詞をすぐ覚えちゃったんですよね。台詞を一字一句間違えずというより、物語の流れが頭の中にスッと入ってきた感じ。なので、反対の役もスムーズに演じることができて、それが三谷さんの印象に残ったみたいです。本当にラッキーでしたよね。やっぱり、この作品がなかったら今の僕はないですし、ここから自分の役者人生が好転し始めたと思っています」。恩人への感謝は尽きない。

　広島大学教育学部を卒業後、役者を志して上京。「三谷さんと一緒に仕事をすることを目標の一つとして掲げて上京したので、このオーディションは気合が入っていました。このチャンスはものにするぞ、と。台本を持たずに勝負するぞ、という心構えだったのが良かったのかもしれません。でも、いまだに三谷さんには“（迫田は）まだ『マジックアワー』（の演技）を超えていないよ”って言われます（笑）。本気なのか、ハッパを掛けられているのか、分からないですけど、『鎌倉殿』の前ぐらいにも言われました。今回？まだなので、聞いてみたいですね。範頼で超えられたのか、まだまだなのか。この先もずっと、三谷さんが創り出す世界観の中で、自分の役割を全うしていけるよう、おごらず精進していかないといけません。それが三谷さんへの恩返しになると思います」

　前回第23回（6月12日）。「富士の巻狩り」の最中に起こった「曽我事件」。頼朝が討たれたとの一報に、留守を預かる範頼は「御台所、鎌倉は私がお守りいたす。万一のため、逃げられる支度だけはしておいていただきたい」。さらに、万寿（金子大地）も討たれたとの情報に、比企能員（佐藤二朗）と道（堀内敬子）は範頼を次の将軍にしようと画策。能員は頼朝の訃報を伝え「この機に乗じて、鎌倉殿に不満を持つ者たちが挙兵する恐れがござる。今こそ誰かが、上に立たねばならぬのです。他に誰がいるのです。腹を括っていただきたい。鎌倉が滅びますぞ」と範頼を焚きつけた。

　しかし、頼朝は鎌倉に無事帰還。頼朝の留守中の出来事を、大江広元（栗原英雄）が報告。「私は、正しいことが分からぬうちは動かぬようにと申し上げたのですが。蒲殿は、まるで次の鎌倉殿になったかのようなお振る舞いでございました」。頼朝は「信じられん…。範頼め…」――。今度は範頼に怒りの矛先が向いた。今夜の第24回。範頼を待つ運命は…。

　＝おわり＝