「鎌倉殿の13人」範頼・迫田孝也が新境地!引いた“静の芝居”義村の“クソ真面目なカバ”「言い得て妙」

[ 2022年6月19日 08:01 ]

「鎌倉殿の13人」源範頼役・迫田孝也インタビュー(上)

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。源範頼役で新境地を開拓した迫田孝也(C)NHK
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 中盤に差し掛かり、一段と神がかる展開が続くNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜後8・00)。俳優の迫田孝也(45)が今作随一の“いい人”源範頼役を好演し、新境地を開拓した。迫田に撮影の舞台裏を聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 稀代の喜劇作家・三谷幸喜氏が脚本を手掛け、俳優の小栗旬が主演を務める大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。新都・鎌倉を舞台に、頼朝の13人の家臣団が激しいパワーゲームを繰り広げる。三谷氏は2004年「新選組!」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は8作目にして大河初主演に挑む。

 迫田演じる源範頼(蒲冠者殿/蒲殿)は、源頼朝(大泉洋)の異母弟。第10回(3月13日)、兄の挙兵を知り、遠江から鎌倉に駆けつけ「途中、道に迷って、こんなに遅くなってしまいました」と政子(小池栄子)にあいさつした。

 第13回(4月3日)、比企能員(佐藤二朗)と道(堀内敬子)が里(三浦透子)ら一族の娘を連れてくると「鎌倉殿のお許しもなく、このようなことは困ります。明日、信濃へ参るのです。支度がありますので、これで」と宴席を断った。木曽義仲(青木崇高)との会談。生焼けの川魚を食べ、おなかを壊す一幕もあった。

 第15回(4月17日)、鎌倉は二分。和田義盛(横田栄司)らが「足固めの儀式」を終えた頼朝の嫡男・万寿ら襲撃。範頼が応戦し、実衣(宮澤エマ)は「意外にできる」。剣の腕も立つ。

 第16回(4月24日)、義仲討ちの総大将を任され、先陣の源義経(菅田将暉)と合流。先走った義経が義仲軍と小競り合いをしていたが「鎌倉殿には言うな。鎌倉殿には私が命じたことにしておきなさい。私が叱られれば済むこと。おまえを鎌倉に戻せと言われて、一番困るのは私だからな」と弟をかばった。福原の平家を攻める際(一ノ谷の戦い)は、義経の“奇襲”を支持。自らは生田口で平知盛(岩男海史)と激突した。

 第18回(5月8日)、源平最終決戦が近づき、範頼は九州攻め。しかし、九州に渡る船を集められない。周防・松崎天満宮。兵糧が届かず、イラ立つ義盛を「どうか分かってほしい。兵たちが民から略奪するのを、我らは止める立場にある。我らが泣き言を言っては、兵は抑えられぬ。魚を釣ってくるよ」となだめた。その後、豊後の緒方一族から船を借り、九州へ。筑前に攻め込んだ。

 そして、大海戦「壇ノ浦の戦い」。範頼は「陸に逃げてきた者たちは残らず捕らえよ。殺してはならぬ」。門司の岸壁から義経の勝利を見届けた。義経は後白河法皇(西田敏行)に戦勝報告。三浦義村(山本耕史)が「クソ真面目なカバは、何やってんだ」と聞くと、畠山重忠(中川大志)は「蒲殿は壇ノ浦に残って、必死に宝剣を捜しておられるとお聞きしました」。義盛は「フフフ、見つかるわけねぇだろ」。第20回(5月22日)、静御前(石橋静河)の舞の席には戻っていた。

 第21回(5月29日)、八重(新垣結衣)が行方不明との一報が入った際には「大丈夫、きっと無事で戻ってきます」と政子を励ました。

 第22回(6月5日)、上洛した頼朝は後白河法皇を2人きりの対面を果たした。夜、北条義時(小栗)たちとは別の集まり。範頼は三浦義澄(佐藤B作)らの不満を受け止め「兄は安寧な世をおつくりになられたいのだ。そのためには、大きな力を持たなければならないのだ。分かってくれ」と理解を求めた。

 範頼「ようやく上洛できて、皆、喜んでるとばかり思っていた」。

 比企能員(佐藤二朗)「蒲殿はいつも、あの者たちの声に耳を傾けられる」

 範頼「兄と違って、わしが暇だからだ」

 能員「皆、口にはせぬが、思っておりますぞ。蒲殿が鎌倉殿であったならと」

 範頼「兄上あっての私。つまらぬことを申すな」

 迫田が範頼の誠実さを見事に体現。陰謀渦巻く今作きっての“癒やしキャラクター”となった。

 役作りについて、迫田は「今回の範頼は、一歩引いたところから周りをフォローする役回り。例えば『真田丸』の(真田家重臣・矢沢)三十郎(頼幸)や(18年の大河ドラマ)『西郷どん』の(佐賀藩士)江藤新平のようなエネルギッシュな人物とは違いますよね。なので、源氏としては頼朝さんに次ぐ立場の説得力や存在感を、一歩引いた上で表現しないといけません。具体的にはあまり声を荒げないことを自分のルールにして“引いて、引いて”という演技を心掛けました。今まであまり演じたことがないタイプの役だったので、自分にとっては大きな挑戦でした」と新境地にチャレンジ。

 義村の台詞「クソ真面目なカバ」も話題となったが「まさしく言い得て妙だと思いました。範頼を演じる指針として、ヒントになりましたね。周りからああいう評価をされているんだから、そのまま“クソ真面目なカバ”を演じればいいんだな、と」。迫田の“静の芝居”により、義経や荒くれ者の坂東武者たちのコントラストも際立ったが「周りとの対比の中で、範頼としての立ち位置はなんとか見つけられたんじゃないかなと思います」と謙遜しながらも手応えを示した。

 前回第23回(6月12日)。「富士の巻狩り」の最中に起こった「曽我事件」。頼朝が討たれたとの一報に、留守を預かる範頼は「御台所、鎌倉は私がお守りいたす。万一のため、逃げられる支度だけはしておいていただきたい」。さらに、万寿も討たれたとの情報に、能員と道は範頼を次の将軍にしようと画策。能員は頼朝の訃報を伝え「この機に乗じて、鎌倉殿に不満を持つ者たちが挙兵する恐れがござる。今こそ誰かが、上に立たねばならぬのです。他に誰がいるのです。腹を括っていただきたい。鎌倉が滅びますぞ」と範頼を焚きつけた。

 しかし、頼朝は鎌倉に無事帰還。頼朝の留守中の出来事を、大江広元(栗原英雄)が報告。「私は、正しいことが分からぬうちは動かぬようにと申し上げたのですが。蒲殿は、まるで次の鎌倉殿になったかのようなお振る舞いでございました」。頼朝は「信じられん…。範頼め…」――。今度は範頼に怒りの矛先が向いた。今夜の第24回。範頼を待つ運命は…。

 =インタビュー(下)に続く=

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