藤井竜王 極限集中の先勝、渡辺王将と白熱139手 19歳5カ月、王将戦7番勝負最年少白星

[ 2022年1月11日 05:30 ]

第71期ALSOK杯王将第1局第2日 ( 2022年1月10日    静岡県掛川市 掛川城二の丸茶室 )

第71期王将戦第1局に勝利し、笑顔を見せる藤井竜王(撮影・西尾 大助、会津 智海)
Photo By スポニチ

 渡辺明王将(37)=名人、棋王含め3冠=に藤井聡太竜王(19)=王位、叡王、棋聖含め4冠=が挑む“令和の頂上決戦”7番勝負第1局は10日、2日目が指し継がれ、藤井が139手で勝利した。“掛川無敗”の渡辺に土をつけた。100手を超えてお互い自陣に手を入れ、中盤へ逆戻りする激戦。7番勝負登場で王将戦最年少挑戦記録を樹立した藤井が、19歳5カ月での7番勝負最年少白星を挙げた。

 持ち駒の桂が駒台で下向きになったまま指し続けた。激戦は、その様子に表れた。

 局面への集中をそらせず、視線を移す余裕すらない。互角のまま100手を超えた終盤戦。渡辺の112手目△6二香に藤井も負けず▲5七桂。中盤へのタイムスリップすら予感させた。

 小学6年から詰将棋解答選手権を5連覇した終盤力をもってしても、勝利への道筋を描けない。「いろいろミスはあったと思う。ただ、秒読みでもあったので分からないままやってました」。王将戦7番勝負初勝利への確信を抱いたのは投了のわずか6手前。133手目▲4三金に△5四王。さらに▲4五銀の連続王手で「際どく詰んでいるのかなと思いました」。渡辺との史上初3冠VS4冠の豪華対決。2日制タイトル戦での初勝利も加え、対戦成績を9勝2敗に伸ばした。

 対局再開のこの日朝、前傾姿勢を45度まで深めた。1時間半後、背後に設置されたストーブの電源を切り、冬物を新調した和服の羽織を2日目で初めて脱いだ。7度目で自身初の冬季タイトル戦。1日目は最低気温1度まで下がったがこの日は最高15度。体温の上昇を受け、佳境を迎えた局面を物語るようだった。

 1日目、藤井が挑発した41手目▲8六歩。52手目△7五歩で伸びすぎたその歩をとがめにこられた。「見通しの立たない局面が続いているのかなと思います」。対局室を舞った羽虫2匹。渡辺は気づいたが、藤井はひたすら盤上没我。右袖に乗っても視線は将棋盤へ向かった。

 新たなコレクションに加えた。王将戦7番勝負における最年少勝利記録を更新。これまでは豊島将之九段(31)が第60期第2局、同じ掛川で挙げた。当時20歳8カ月で1年3カ月更新。昨夏の王位戦第5局から継続するタイトル戦の連勝も7に伸ばした。

 22、23日に大阪府高槻市「山水館」で控える渡辺との第2局。「しっかり内容を振り返って次につなげたい」。心強いのは10代で身につけた平常心だろうか。「1日目はいつも早めに眠るようにしています」。前夜も午後10時に就寝し、午前6時半に起床。タイトル戦当日は眠れない棋士も多い中、「8時間半ですか?」と再確認されても「はい」と笑顔で応じた。

 確信を持てずに指した手が勝利に結びついた時、棋界では「指運(ゆびうん)」と呼ぶ。運をたぐり寄せた、心技体が最年少4冠には備わっていた。

 《AIも悩んだ、最後まで“互角”》AIによる形勢判断の数値も長く均衡が保たれた。インターネット会員サービス「囲碁将棋プレミアム」の生中継で表示された形勢判断は終盤まで互角となった。最終盤の130手前後でようやく藤井の90%台を指すなど、AI上も大熱戦を示していた。

続きを表示

この記事のフォト

2022年1月11日のニュース